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7 カモメ ページ7

「チョタってのは、あの白い家に住んでた人達の
ことか?」
大柄で一見強面の男だったが、
真剣に思い出そうとしてくれているのか、
腕を組んで左肘をじっと見つめている。
「なんでそんなこと聞くのかは知らんが……。
あの人たちがどこに行ったのか、
誰も知らねぇんだ。」
船乗りはこう言った。
「いなくなった日、チョタ家の船が
この港から出港したのを見たやつはいるが、
それがどこに行ったのか。
ま、あのままいけばこれされてたわけだしな、
亡命してもおかしくないだろう。」
そう言って、男は首にとんとんと手刀を当てた。
私が絶句して、詳しく聞こうとするのを、
卯月兄が肩に手を置いて遮った。
「ありがとうございました。」
卯月兄はいつもそうだ。
大切なことは、全部終わってから言う。
「あっ、だがな。チョタの次男坊だった
カブラスがいるだろ。
あれに良く似た舞台役者が
アリアフェリス劇団にいるらしい。
もしかしたら、
アリアに逃げたかもな。」
船乗りはそう言ったきり
また出航の準備に取り掛かった。
カモメはいない。静かな港だ。

「アリア、か。」
卯月兄は唸りながら繰り返した。
アリアは住めば都、例外あり。
アリアに相応しくないものは、差別に苦しむ。
卯月兄は私のことを心配しているのだろう。
「私なら大丈夫だよ。行ってみよう。」
卯月兄は目だけで私を見た。
そばかすが波打つ。
そうしましょうか、を待っている。私は。時々、悪い子を気取りたくなるのだ。
「分かりました。行きましょう。」

とはいえ、べルギウス横断で
手持ちは使い果たし、
正規の方法でアリアまで行くには
とんでもない金額がかかる。
仕方がないので、私はAと彫られた船の
近くにいた人に声をかけた。
「あの、私たち、アリアに行きたいのですが
金銭的に厳しくて。
雑用でも何でもしますから、
乗せて下さいませんか。」
船乗りは驚いたように私たちを見た。
卯月兄のケープを見て、「学者さんかい」と
言うと、他の船乗りたちに相談してくれた。
待っている間もどかしく、
何度船乗りたちの方をちらちら見たか。

「よかろう。」
船長と思しき男が私たちの前に来て言った。
かなり年老いているが、威厳に満ち、
眼光も鋭い。
「海賊の船で良ければな。
私は、船長のピリカだ。」
ピリカは骨ばった手を差し出した。
私は間髪入れず手を出した。
握手。交渉成立だ。

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設定タグ:ペケーニョ・デレーチョシリーズ , 小説 , シリアス   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:クインテット | 作成日時:2019年5月2日 1時

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