1 狼を忘れるな ページ1
私には父と母、兄がいる。
私は幸せに暮らしていた。
父が亡くなるまでは。
勿論、母が死んだ時も悲しかった。
でも。父が死んだ時――。
「俺は……。お前の本当の父親じゃありやせん。
実父は……お前を迎えにくるはず。
狼を……忘れるな。」
そう言って、父、宇治川銀平は亡くなった。
狼を忘れるな、それは、父の口癖だった。
何故か、それは私と天兄にしか言わず、
卯月兄には言わない。
不思議な口癖だ、そう思っていた。
卯月兄は成人して家を出ていたから、
天兄だけが私の家族だった。それなのに。
父の死後、天兄の精神が不安定になった。
訳の分からない言葉を呻いてばかり。
でも、私にはどうしようもなかった。
弱かったから。
ある日。
天兄はヒトではなくなった。
毛むくじゃらで、細い瞳孔は怪しく光る。
まるで、狼のようだった。
「天兄……?」
私がどれだけ名前を呼んでも、
ただ呟くだけ。
「僕は……。落ちこぼれなんだ。
僕は、本当の両親の記憶がある。
母さんは、狼なんだ。
母さんは上手にヒトのふりできるのに。
僕は、どうして。」
天兄は震えながらそう言い、
雨の中飛び出して行った。
それきり、彼の行方は誰も知らない。
私はというと、両親に会うために、
森に入っては狼を探している。
その生活に不満はない。
いつか必ず、両親に会う。
そして、何故私たちを迎えに来なかったか、
聞いてやるんだ。
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作者名:クインテット | 作成日時:2019年5月2日 1時