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23 I can't see you. ページ23

おおかみさんの冷えた体が、
少しずつ暖かくなっていった。
そして。
私は、優しく、聞いた。

「ねえ、今度はおおかみさんのこと、
聞かせてよ。」
おおかみさんは、優しく笑って言った。
「いいぞ。」

おおかみさんは、私の頭を撫でた。
もう、大きくなったのに。
「ルナード。おおかみさんのお家に、
一緒に行かないかい?」
「お家?」

おおかみさんのお家は、
あの館だと思っていた。
でも、違うらしい。

「そう。助けてはくれないだろうけどね。
それと……。いや、これは、今度でいいか……。」
悲しそうだ。
おおかみさんも、
どこにも行くところがないのかもしれない。

おおかみさんは、家に着くまでに、
いろいろなことを話してくれた。
今までの身の上話と、家族の話。
おおかみさんの差し出した林檎を
頬張りながら、私は黙って話を聞いた。

おおかみさんには、
ひとりのお兄さんがいるらしい。
彼とは母親が違い、彼の母親は人間らしい。
本来、おおかみさんの住む場所は、
魔物と人間の血が混ざった者が住む
場所なのだそう。
しかし、おおかみさんの母親は、
普通の狼だった。
おおかみさんは、第二子だったこともあり、
何かと兄と比較された。
おおかみさんは、
お兄さんに勝とうと努力した。
でも、おおかみさんが
跳び箱を3段跳べるとこには、
お兄さんは7段跳べるように、
ふたりには大きな差があった。
おおかみさんは、劣等感を持って育った。
おおかみさんのお父さんも年を取り、
そろそろ王の位を譲るというころ、
お兄さんは姿を消した。
普通なら、弟のおおかみさんが
引き継ぐことになるはずだ。
しかし、お父さんはこう言った。
「僕もまだ元気だし、
王位継承は先延ばしにしようか」
それからだった。
おおかみさんがひとりになったのは。

私が林檎を食べ終わった時、
おおかみさんは泣き出した。
男の人は声を上げて泣くものじゃない、
と誰かが言っていたけれど。
私はおおかみさんの号哭を聞いているうちに、
自然と涙がこぼれ落ちた。
やがて、その間隔が短くなっていく。
そんな私の顔を見つめて、
おおかみさんは頭を撫でた。
俺のことで悲しむことないのに、
とも言った。

おおかみさんは、
大事なのに捨てられる。
林檎の芯みたいだ。
と、私は思った。

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設定タグ:シリアス , ペケーニョ・デレーチョシリーズ , アップルパイ   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:クインテット | 作成日時:2016年7月7日 22時

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