Fall. (ページ16)

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16　Happy end ページ16

辺りが明るくなった。
とうとう、声もしなくなった。
しんとしている。
そういえば、
おおかみさんはどうなったのだろう。
無事なのか。それとも。

ぐうとお腹が鳴る。
あの女の人は、また来るのだろうか。

果たして、来た。
食事を運ぶ手が震えている。
そして、私の体を調べる時、首輪によって
つけられた傷を見て、今度は笑った。
そして、傷の上に爪を立てて、ゆっくりと
首を締めた。

「けほっ、げほっ、」
残り少ない酸素も、空しく二酸化炭素になって
口から吐き出された。

「お前のせいで……お前のせいで、
私の主人も！子供も！」
首を締める力が強くなる。
喉はとうに潰れ、乾いた音を出している。
「死んだのよ」

意識を取り戻した時、
女の人はもういなかった。
そして、２度と顔を見ることはなかった。
食事は豪華になり、
鉄格子の向こうには番人もついている。
何故だろう。

それでも、
相変わらず首輪と手錠は外れてくれない。
明かり取りの窓からは、赤い光がただただ
足元に投げ出されているだけだ。

見上げた月は、少しずつ小さくなり、
痣は日に日に濃くなっていった。
ここに来てからというもの、
眠る、という感覚はなく、
夜中になると、叫び出したくなって
喉が開き、そのせいで首が絞まる。
そして、気絶して、朝目を覚ます、
という具合だった。

今も、次第に視界がぼやけて来ている。
このまま、意識を手放して、楽になりたい。
足を投げ出した床の冷たさからも、
繋がれた体の痛みからも。

そんな時。
教会の近くで、人の声と、
狼の雄叫びが聞こえた。
まさか、という気持ちが、
私の意識を引き戻した。
おおかみさんが、助けに来てくれた。
そんな、ハッピーエンドを
願っていたのだ。