15 Alone ページ15
たくさんの人の怒鳴り声が、
少しずつ近づいてきた。
目が覚め、手首に強い痛みを感じた。
その声は、いつもの声ではない。
何に怒っているのか。
自分でわかりもしないくせに。
足音が大きくなり、教会を通りすぎた。
大きかった月も、窓から見えなくなっている。
それでも、
窓から差し込む光は、あやしかった。
声は、森の奥へと向かっていった。
おおかみさんのいる、暗い森に。
もう、縛られた体をよじる気力もない。
おおかみさんはきっと大丈夫。
いや……。
直に、たくさんの人の叫び声と、鳥の羽音が
耳をつんざいた。
教会とは、かなり離れているのに。
翌朝。
1人の虚ろな女の人が、私の元に訪れた。
豆のスープを私に食べさせ、
パンを口に押し込んだ。
そして、私の体を触って、
いろいろと調べているようだった。
「何も分かっていないのね。可哀想に……。」
その人は、昼も夜もやってきて、
私に食事をさせ、私の体を調べた。
そして、私の傷を見るたびに、涙を流した。
おまけに、必ずこう言った。カワイソウニ。
ある夜、
おおかみさんの声が聞こえた。
どこ?
おおかみさん、どこ?
「ロボ……。」
おおかみさんの名前を呼ぶ。
でも、いない。
こない。
町の人は、
今度は私からおおかみさんを奪うの?
いやだよ。
町の人は何も与えてくれなかった。
私は何も持ってない。
だから何を取られたって構わない。
でも……おおかみさんは違う。
おおかみさんがいないと、
私はルナードでいられなくなっちゃう。
もう、他のものになりたくない。
痛い。
初めて、殴られもしてないのに、
胸が痛かった。
泣いた。
周りには誰もいない。
今まではそれが心地よかったのに。
寂しい。
もう一人は嫌なのに。
おおかみさんは私が嫌なことは
しないんじゃなかったの?
満月だった赤い月が、少しだけ欠けた。
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作者名:クインテット | 作成日時:2016年7月7日 22時