Fall. (ページ12)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:3,912 hit

12　Don't worry,don't worry. ページ12

親父との約束は、ルナードを10年間守ること。
手段は何だっていいはずだ。
ルナードはぼろぼろ泣き出した。
ごめんな。
でも、大丈夫だから。
捨てられる辛さは、俺も知っているから。

「これから毎晩、お前の家に行く。
そして、面白い話を聞かせてやる。
勉強もさせてやる。
おいしいものも食わせてやる。
さみしい思いなんてさせないから。」

それだけ言うと、
俺は先ほどの男に化け、
ルナードの発見を伝えた。

ルナードは、涙を堪えた。
これ以上泣いたら、
俺が疑われてしまうから、と。
少なくとも、俺にはそう見えた。

「ルナード。大丈夫。さみしくないからな。」
親どもに抱かれ、ルナードは遠ざかっていく。
夜の中に。
優しいはずの、真っ黒に。

俺は館に戻り、空を見上げた。
今日は新月だったのか。
どうりで森が暗かった。

10年。
俺達にとってはあっという間で、
人間たちにとっては一生を左右するもの。
ルナードにとってもそうだろう。

それでも。
このまま追われ続けるのにも限界がある。
一晩森を歩くのに靴擦れを起こすような
脆い人間を、俺がどうやって守れよう？
ルナードを思うならば。
幸せにできるならば。
これで正解なのではないだろうか？
どうだろう？
どうすればいい？

降ろし子。

俺だって同じだ。
次男など、ただ家計を食い潰すだけだ……。
ただ俺は、
兄貴がいなくなったから必要とされただけ。
だけどルナードはそうじゃない。
降ろし子と呼ばれ、虐げられてなお、
くだらない見栄のために必要とされる。
まるで動物じゃないか。
ルナードは美しい。
俺を恐れもしない。人間を憎みもしない。
それなのに。

どうして？