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あの日、太輔が救ってくれなかったら今俺はどうなってたんだろう。
向かい合うように眠るベッドの中、ふと思い出した。
メンバーには俺が疲労で倒れて運ばれた事になってた。
だから本当の事を知ってるのは太輔とマネージャーのみ。
それは俺の気持ちを最大現に汲み取ってくれた太輔の気遣い。
あんな状況で相当焦っていた筈なのにそこまで気が回せただなんて…
初めに見つけてくれたのが太輔で良かったと心から思った。
…おかげで俺は、アイドルに復帰出来た。
あの時太輔が笑いかけてくれた、その瞬間から俺らの世界は動き出した。
あの日から太輔はずっと傍に居てくれた。
病んだ数、悲しんだ数。
それ以上にたくさんの幸せと喜びをくれた。
「太輔」ってふざけて呼べば「ひろ」って返してくれた。
家にだって住ませてくれてる。
全身で愛してくれた。
互いの愛の言葉はただの1度だって聞いた事ないけど、言葉なんて軽いものはいらない。
愛が伝われば、それで充分。
太輔もそれをわかってくれてる。
死から始まった愛なんて誰にも言わない方がいいよな?
2人だけの秘密。
もう、俺は死にたくない。
ただ太輔といたい。
胸に顔を埋め目を閉じれば胸いっぱいに広がる匂いと温かい体温。
トクン、トクン…と感じる太輔の鼓動。
…落ち着く、音。
すっげえ、幸せ…
…なのに、なんで…?
太輔と共に笑い合う女性の姿。
俺には見せない、表情。
俺には言わない、言葉。
確かにその唇が紡いだ“すきだよ”
世界が、また止まった気がした。
どうして?
死のうとしてた俺は重かった?
面倒だった?
…もう引き返せない程俺に深入りしちゃったのが怖かった…?
そうだ、思い出した。
俺が死んだ理由。
それは…
愛ガ知リタカッタカラ。
死にたくない…?
いやもう…そんな気持ち…ない。
「…っひろ…!」
自ら死に飛び込むことで手に入れた幸福ってなんだったのかな。
カーテンが遮り見えなくて…
後悔すればいい、
それで死ぬまでずっと俺の事を考えて苦しめばいい。
にやりと自分の口角が上がるのを感じた。
落ちていく…地面にぶつかる前、
ひらりカーテンが風に揺れ、最後の太輔の顔が見えた。
“愛してる”君に向けた最期の言葉。
本当は
「死なないで」
止めて欲しかった、なんてね。
〜恋人の浮気編〜 Fin.
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作者名:美結 | 作成日時:2019年5月23日 23時