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「確かに、今日の白竜はいつにも増して面倒臭い…あ」
「ん？」
思い出したくもないこと思い出した、と溜息を一つついた。すれば、突然話を辞めたシュウに、何事かと首を傾げる。
すると彼は、ちょいちょい、と人差し指を突き出して私の背後を指差した。その方向を辿れば、大きな影が伸びているのが見える。…あ、なんかやだ。
「私は「試合を始める」と言った筈だが？」
「げ、教官…」
「口を慎め」
人間、嫌な予感程的中させる、とはよく言ったものだ。いつの間に移動したのやら、私の後ろには、腕を組んで仁王立ちする牙山が現れていた。
「お前以外は既に揃っているぞ」
「え、でもシュウも…！ってあ゛っ」
おかしい、と反論しようと振り返れば、そこにはシュウの姿はない。代わりに、他のメンバーと同じくセンターサークルに整列する彼の姿が、私の目に写し出された。
「ざけんな、覚えてろよ…！」
見れば、シュウはチラッと私の方を見ると、頬を膨らませてべっと舌を突き出した。誰か殴り込みの許可をくれ、切実に。
「おい、早く並べ！遅れてるんだ」
「分かりましたって！！」
何処にぶつければいいのか分からない怒りを叫び出しそうになる口を塞ぎ、同情するような周りからの視線を背中に受けながら白竜の横に立つ。
白竜は一瞬こちらに目を向けたが、すぐに前に向き直る。さっき帆田と話していた作戦に関わるのか、しきりにシュウの方を見つめているのが見て取れる。寧ろ、敵意を剥き出しにしているという表現が正しいのか。
何を考えてるのかは聞いてないが、それじゃあシュウと、エンシャントダーク司令塔のカイにはモロバレな気はする。
「では、これより試合を開始する。以前伝えた通り、試合では白竜、シュウの両チームキャプテンを中心とする事！司令塔はキャプテンの指示通りに作戦を練る事ととする」
牙山が邪魔臭い髭を撫でつけながらメガホンを通してルールを叫び出す。
…これだ。なんでも、ここのシードの中でも圧倒的実力を持つ2人の実力を伸ばすとかなんだとか。てことで私は白竜に指示を出すことは出来ないし、助言をしてはいけない。
お世辞にも効率的とは言えないが、聖帝だか教官だかの命令だ、従わない訳にはいかない。
「では、開始…と言いたいところだが、一名時間を守れない“バカ”がいたからな。白竜、A含め全員にもう一度策を伝えろ。時間は2分半とってやる」
「…分かりました」
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作者名：わらびもち | 作成日時：2020年8月18日 23時
