。 _ IX ページ9
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女が眼を覚ますと、其処は白いベットの上だった。
「おヤ、眼を覚ましたかい?」
武装探偵社専属医の与謝野晶子はベットでキョロキョロする女に云う。
「…此処は?」
「武装探偵社さ、アンタ、川の近くで倒れてたのを太宰が連れてきたンだよ」
与謝野は女、柊Aに向かって云う。
「あの、女医さん」
「なンだい?」
「私、記憶ある」
Aは信じられなかった。
Aの異能は『一日に一人、人を殺す異能』ではなく『一日に一人、自分の記憶を消す異能』である。
その異能に掛かった対象者は自分の事を名も年齢も性別も『自分に関する事』だけを凡て忘れてしまう。
その代わり、外傷や病気なども凡てリセットされて綺麗な姿に戻る。
「何云ッてンだい?記憶あるッて…」
Aは考えた。
芥川が前に云っていた事、『僕の師は異能無効化だ』と。
もし、その異能無効化ができる師が自分に触れていたら、自分が自分に掛けた異能も消える。
だが、外傷のリセットも消えるから損傷は元通りに…。
「女医さん、もしかして治癒異能力者?」
「…何故、判ッた」
辻褄があった。
Aは直ぐにベットから飛び降りた。
「ちょッ、待ちな!」
後ろから与謝野の制止が聞こえてくるAであったが無視し探偵社を飛び出した。
向かう処はただ一つ、ポートマフィア。
自分の異能を使いたくないが、Aには其処しか居場所がなかった。
太陽が高く昇っている。
昨日の芥川との任務は午後7時ぐらいの事だったから、もう既に半日は経過していた。
Aは走った。
一秒でも早く居場所に着けるように。
マフィアの入口が見えてきた時、Aは知る後ろ姿が見えた。
「狂犬ッ!」
消え入りそうな声で其奴を呼ぶ。
芥川は世界でたった一人、自分の事をそう呼ぶ奴の事を想い振り返る。
「…遅いぞ」
「ゴメン、少しね」
Aは芥川に飛びついた、芥川は不意の事だったが異能で何とか持ちこたえる。
「私はお前に殺してもらうのが終焉だからね」
「僕がAを殺すまで死ぬな」
「当たり前じゃん」
Aは死を望む眼を止めた、自分のやるべき事、居場所が見つかったからだ。
「森さんに協力は止めるって云わないとな」
「だな」
二人は何も喋らなかった。
何も要らなかった。
今と云う時間が続いて、自分の居場所があってくれるだけで。
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田中りん(プロフ) - おかえりなさいです!!このシリーズ面白くて大好きです!帰って来てくれて好きです!うれしいです! (2021年3月13日 12時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
星(プロフ) - このシリーズいつも見てます。とっても面白いです更新頑張ってください (2020年5月21日 16時) (レス) id: 569fd15754 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遠藤氏 | 作成日時:2020年5月18日 13時