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誰もが見惚れる笑顔が落とした
要約すれば『貴方に会えたから良い一日』だなんてお砂糖のような発言
あー、もう、これだから
「……じゃあ、中原さんにそう云ってもらえた私の今日も、とびきり良い一日ですね」
にこりと口角が上がるのに任せて、帽子の奥の眼差しを見つめ返して云い放った
「へえ、そりゃあ光栄だな」と中原さん、ほらその受け答え、微笑み、声に視線に立ち居振る舞い
危ない危ない
忘れちゃいけない、中原さんみたいな人はちょっとしたことで他人をころりと落とせるんだから
何に落とすってそれは
____勿論、恋にだ
「またまた、そんなんだと、勘違いする女の子が出て来ちゃいますよ?」
相手が私なら大丈夫ですけどね
私はちゃんと
彼とはお隣さんとして仲が良いだけ、そこにそれ以外の関係も感情もないし
むしろこの距離感じゃなきゃ、彼みたいに素敵な人が果たして私と関わりを持ってくれるのか
「 " そんなん " って、どういう意味だ」
「そんな風に、分け隔てなくみんなに優しくしてたら、って意味です」
こんな人が隣人だなんて私は本当に運が良い
「手前、俺が誰にでもこうだと思ってんのか」
「だって私にまで優しいし」
「そう思ってんなら怒るぞ」
むしろ運に翻弄されてるのでは、と思うくらい
例えば今、ふと笑みを消した青い双眸が、揺らぐ事なく真っ直ぐに私の心を刺してくる
眠気も鳥の囀りもそれを邪魔をするには及ばない
「俺が優しいのは手前にまでじゃなく、手前にだけだって考えたことはねえのかよ」
ある訳なかった
というか、どうやったらそんな烏滸がましい考えに辿り着くことが出来るというの?
私はたまたま隣に住む女、云ってしまえば赤の他人だろうに
「……中原さんは、何が」
云いたいんですか
そっと尋ねようとしたその時
「___う"、げほっ、ごほっ!」
私の言葉と二人の間の空気を遮るように、濁点うるさく激しく咳込む声の方へ目を向ければ、中原さんの部下さん
「あ"っ、いや、……お、俺、空気なんで!」
私と中原さんの視線を一心に引き受け、絆創膏の似合う顔を真っ赤にして慌てふためく
「誰が何と云おうと、俺空気なんで! 気にせず続けてもらって大丈夫っす!」
必死に取り繕う彼には申し訳ないけど、話を戻すのはどうも無理そうだ
___だって三秒後、堪え切れずに笑う私が居たから
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楓(プロフ) - 完結おめでとうございます!鼻血が出過ぎてぶっ倒れる所でした(笑) 推し尊い…… (2019年4月3日 0時) (レス) id: 381002261f (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 完結おめでとうございます!キュンキュンが止まりませんでした。ありがとうございます! (2019年4月2日 16時) (レス) id: 4d7fcc5e30 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 完結おめでとうございます。いいお話でした。 (2019年4月2日 15時) (レス) id: 1bfa3e637e (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 更新されてる?( ☆∀☆) (2019年2月9日 10時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - あぁ、、、推し(中也)が尊い、、、 (2019年2月9日 9時) (レス) id: c6be9b3184 (このIDを非表示/違反報告)
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