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売れ残りのおにぎり、種類の少なくなったお弁当
十分だ、今夜と翌朝の分さえあれば、空腹という名の最高の調味料があるのだから
「お待たせしました!」
「よし、帰るか」
レジ袋を右の手にぶら下げ、外で待っていた中原さんに駆け寄れば、ちょうど彼は煙草を一本吸い終えたところだった
さっき来たばかりの道を、もう一度中原さんと戻っていく、のだけど
___「貸せ」の一言の後右手が軽くなって
「わ、私、持てますから! 」
「俺が暇なんだよ」
「でも、悪いです…!」
口で云っても足りなさそうで、中原さんの手にあるレジ袋を取り戻すべく、無理やり手を伸ばすけど
まるで全部読まれているかのように、ひらりひらりと躱されてしまう
「俺が好きでやってんだ、諦めろ」
その台詞も行動も、何もかもが優しくてたまらない筈なのに、どうしてだろう
夜を照らす電灯のもとに見えた中原さんは、むしろ悪戯っ子のような笑顔だった
あーあ、ずるくて厄介なお隣さんだこと
口を尖らせつつ手を引っ込めば、満足そうに見返してきたりするんだもの
「……じゃあ、中から珈琲出して下さい」
「ん、珈琲? これか?」
「それ、中原さんにです」
確かブラックがお好きでしたよね?
無糖の文字の書かれた缶を持つ彼に云うのは、たまたま以前耳にしていた情報だ
夜道を付き添って頂いたお礼のつもりが、荷物まで持ってもらって、割に合わなくなってしまったけれど
「これ、手前が、俺のために?」
「私ばかり優しくされるのは癪ですから」
小さく目を見開き、確かめるように聞き返してきた中原さんに、我ながら可愛くない返事
にも関わらず、瞬きをした次の瞬間には、彼は嬉しさを滲ませた表情をしているのだ
「そりゃどうも、有り難く頂いておくぜ」
なんて云って
レジ袋とは別に、中原さんのポケットへ仕舞われた缶の珈琲
何だか今更恥ずかしい
二人の間を鳴り続ける二つの足音とレジ袋の擦れる音に居たたまれなくなった
「あの、やっぱり私、自分で持ちます」
「良いから、手前は大人しく頼っとけ」
けれど、彼の強引な優しさは阻めず
「ああ、勘違いすんなよ?」
" 誰でも良い訳じゃねぇぞ、
ヨコハマの夜に紛れて告げられた言葉は、違った勘違いや期待を生み出しそうで
____否、そんなこと、ある訳ないか
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楓(プロフ) - 完結おめでとうございます!鼻血が出過ぎてぶっ倒れる所でした(笑) 推し尊い…… (2019年4月3日 0時) (レス) id: 381002261f (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 完結おめでとうございます!キュンキュンが止まりませんでした。ありがとうございます! (2019年4月2日 16時) (レス) id: 4d7fcc5e30 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 完結おめでとうございます。いいお話でした。 (2019年4月2日 15時) (レス) id: 1bfa3e637e (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 更新されてる?( ☆∀☆) (2019年2月9日 10時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - あぁ、、、推し(中也)が尊い、、、 (2019年2月9日 9時) (レス) id: c6be9b3184 (このIDを非表示/違反報告)
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