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目が覚めたら、もう朝だった
さっきまで見ていた夢をよく覚えてる
確かマフィンを作る夢だった、ブラックの珈琲に合うように、お砂糖少なめ甘さ控えめのマフィン
ああ、そっか
昨日の朝中原さんに、マフィンを作って差し入れますと約束したからだ
_____それで、今は何時?
「ああああ…やってしまった…」
いつもより時計の針がぐるり、二周分の寝坊
吃驚もがっかりもしてる暇はなくて
寝癖気味の髪の毛は結って、焦って掛け違えたシャツの釦は上着で隠して誤魔化した
「__ふう…、よし、」
昨日も疲れて帰ったから、部屋は閉め切られたままで戸締りは要らず
必要な物は入れっぱなしの鞄を肩に掛け、外へ出るなり全速力で走る覚悟を決めて、玄関の扉を押した
__ら
「え、な、な、中原さん…!?」
何の偶然か、同じタイミング、同じ音でガチャリと鳴った計二つの玄関扉
一つは勿論、私が開けた私の部屋のもの
もう一つはと云うと__居ないとばかり思ってたお隣さんが開けた、隣の部屋の扉で
「おう、手前も今日は遅いのか」
「や、あの、えーっと、」
「あー、それとも遅刻か?」
___なら早く
なんて、中原さんは云いながらもその顔に揶揄うような意地の悪い笑みを浮かべていて
私が咄嗟に閉めようとした扉に、その足を挟んでさせてはくれなくて
「なかはらさ、」
「何で俺の方見ねえんだよ」
両手でドアノブを引っ張って彼の足が作る以上の隙間を作る事のないよう抵抗しながら
大きく顔を逸らして俯く私を、彼が覗き込む
__だめ、今見られてはだめだ、だって、
「私、すごく寝坊しちゃって、それで、その、すっぴんなので…」
変わらず下を向いたまま答えた声も、寝起きなのが丸判りで情けない
ほら、話を理解した中原さんが溜め息を吐いた
「…へえ」と声を零し、足を引っ掛けている扉へ黒い革手袋に包まれたその手を添えて
「そう云われると、見たくなるもんだろ?」
え、と間抜けな声すら出せなかった
私がいくら、握り締めたドアノブをありったけの力で引いたって、それは思い通りの方向には動いてくれないで
むしろ軽々と、中原さんの手によって開け放たれた
「待って下さい、お願い…」
お陰で扉に引っ付くようにして廊下へ飛び出た私
慌てて顔にやろうとした手は
「よし、捕まえた」
___中原さんに攫われて
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楓(プロフ) - 完結おめでとうございます!鼻血が出過ぎてぶっ倒れる所でした(笑) 推し尊い…… (2019年4月3日 0時) (レス) id: 381002261f (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 完結おめでとうございます!キュンキュンが止まりませんでした。ありがとうございます! (2019年4月2日 16時) (レス) id: 4d7fcc5e30 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 完結おめでとうございます。いいお話でした。 (2019年4月2日 15時) (レス) id: 1bfa3e637e (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 更新されてる?( ☆∀☆) (2019年2月9日 10時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - あぁ、、、推し(中也)が尊い、、、 (2019年2月9日 9時) (レス) id: c6be9b3184 (このIDを非表示/違反報告)
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