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せっかくのセール、だけど
太宰さんが持つ買い物カゴには、品物をほいほい入れたりなんて出来なくて
「私に遠慮しなくて良いのだよ?」
「べ、別に遠慮なんか……」
「優しいんだね、Aちゃんは」
私の思考を読んで先回りする太宰さんには敵わない
そんな甘いマスクで、そんな風に云われて
ときめかない人なんて居る訳ないのに
その優しい瞳から目を逸らして、はぐらかすようにじゃが芋を手に取った
「お肉、人参、玉ねぎ……それとじゃが芋?」
「どれも安かったので」
「へえ、それで今日の夕食は?」
「太宰さんの分はありませんからね」
もう何回も云ってますけど、と
呆れる私を見て、太宰さんはへらっと笑って頷く
本当に判ってるのかな、なんて、小さく息を吐きつつカゴの中身へ目をやった
今夜の献立はすぐに決まった
「咖哩にします」
呟いて、太宰さんを見上げたら
「___ああ、咖哩ね」
初めて見る、太宰さんの
薄く残った笑みに、哀しさが滲み出てるような、そんな太宰さんに心がたじろぐ
いつも飄々としている変わった人
そんな印象が強かった太宰さんの、私の知らない
「だざい、さん……?」
「ん、なぁに?」
けれどそれは一瞬のことで
瞬きをした次の瞬間にはもう、太宰さんは普段の様子に戻っていた
見間違いだったのかと疑うほど、すっかりと
「太宰さん、あの、」
「まあこの材料じゃあ咖哩だよねえ」
「……、そうですね」
「君は辛い方が好み?」
他愛のない咖哩談話
上手いこと話を逸らされてしまった
私の脳裏にはまだ、さっきの太宰さんがこびり付いているのに
「買い物はこれで終わり?」
「はい」
荷物を持って、隣を歩く太宰さん
それだけじゃなくて、さり気なく車道側を歩いてくれてることを、私はちゃんと判ってる
「太宰さんは夕食どうするんです?」
「うーん、面倒だし、何も食べなくて良いかなあ」
呑気な声で返ってきた答えが
___何かやっぱり、気に食わなくて
「太宰さん、一緒に夕飯食べましょう」
気付いたらもう、そう云っていた
砂色の裾をチョンと握って
掴みどころのない瞳を見上げて
「私の分はないんじゃなかったのかい?」
「……それとも、咖哩は嫌いですか」
太宰さんは僅かに目を見開くと、それから、ふわっと小さく笑ってくれた
「___お言葉に甘えるよ」
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カズハ(プロフ) - 太宰さんの言葉選びが最高すぎてキュンキュンしました!!ありがとうございます!! (8月7日 3時) (レス) @page50 id: a9129a72cb (このIDを非表示/違反報告)
カカオ - すみません。「 やきもち日和」のパスワードは何ですか? (2018年6月8日 0時) (レス) id: bcda3478dd (このIDを非表示/違反報告)
神羅°(閲覧専用)(プロフ) - 最高です!!太宰さんがかっこよすぎてキュンキュンしちゃいました(歓喜)ありがとうございますw (2018年3月18日 1時) (レス) id: 7fad23618c (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 太宰さんかっこよすぎて、キュンが止まりませんでした!完結おめでとうございます! (2018年3月4日 1時) (レス) id: fe3c394919 (このIDを非表示/違反報告)
サッピー(プロフ) - この話最高でした!もう一途な太宰さん最高!ついつい顔がにやけてしまいました!完結おめでとうございます!! (2018年2月16日 12時) (レス) id: d2c3ca49e1 (このIDを非表示/違反報告)
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