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苛々する、苦しい、切ない、酷く寂しい
ここまで心をかき混ぜられるのは、それだけAちゃんにぞっこんだからなのに
「Aが直接渡して云った方が、貴様も素直に聞くだろうと云ったんだがな」
なんて小話と共に、書類を渡してきた国木田くん
そんな話をするくらいなら、全く、どうして受け取ってくれてしまったのだ
最後まで貫き通して、Aちゃんを私のところへ寄越してくれれば良かったじゃないか
「へえ、国木田くん、私のことをよく判ってるね」
「黙れ、良いから仕事せんか」
「君の云う通りAちゃんの手渡しだったら、やる気も出ただろうに」
調子良く冗談めかす気力はない
ペラペラと私の手に遊ばれる書類を嘲笑い、わざと国木田くんに聞こえるように呟いた
「……判った、次はそうさせる」
「ふふ、頼んだよ」
Aちゃんに避けられること数日
そのきっかけやら理由やらは二の次で、まずはAちゃんと今一度言葉を交わしたくて
私は、こうして地道に、けれど確実に外堀から埋める手を取った
「急用なんて嘘、見逃してあげなきゃ良かった」
国木田くんが去った後のデスクにて、一人思い返すのはAちゃんとの最後の会話
大事な話って云っただろう
予め最初に断っておいたのに、君はそれを遮って逃げたかと思えば、あろうことか私をあからさまに遠ざけたりなんかして
さっき君は、谷崎くんと笑顔で話していたね、私とは目だって合わせてくれないくせに
その前は鏡花ちゃんと居るのを見た
女の子である彼女にまで妬いてしまうほど、君と話したくて、君に触れたくて堪らない
「機嫌はどうだ、太宰」
「おや乱歩さん……最悪ですよ」
「あっはっは、だろうな」
乱歩さんの目に私たちはどう映っているのだろう
_____改めて、告白を
大事な話って、簡単に云えば告白だったのだよ
云いそびれてしまったけれど、私はもうあのアパートを出ることになるから
だからその前にもう一度、想いを告げて返事をもらおうと思ったのだ
欲を云えば前よりも明るい返事を
でも、だめだったようだね
「隣町で殺人事件が起きた、今日はお前が僕の助手を務めろ、太宰」
「ええ、私ですか」
これは乱歩さんなりの思いやりだろう
確かに推理でもすれば気は紛れるかもしれない
しかし乱歩さん、貴方が先に全てを解き明かしてしまうでしょうに
「判りました、行きましょう」
まあ、お言葉には甘えるけれど
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カズハ(プロフ) - 太宰さんの言葉選びが最高すぎてキュンキュンしました!!ありがとうございます!! (8月7日 3時) (レス) @page50 id: a9129a72cb (このIDを非表示/違反報告)
カカオ - すみません。「 やきもち日和」のパスワードは何ですか? (2018年6月8日 0時) (レス) id: bcda3478dd (このIDを非表示/違反報告)
神羅°(閲覧専用)(プロフ) - 最高です!!太宰さんがかっこよすぎてキュンキュンしちゃいました(歓喜)ありがとうございますw (2018年3月18日 1時) (レス) id: 7fad23618c (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 太宰さんかっこよすぎて、キュンが止まりませんでした!完結おめでとうございます! (2018年3月4日 1時) (レス) id: fe3c394919 (このIDを非表示/違反報告)
サッピー(プロフ) - この話最高でした!もう一途な太宰さん最高!ついつい顔がにやけてしまいました!完結おめでとうございます!! (2018年2月16日 12時) (レス) id: d2c3ca49e1 (このIDを非表示/違反報告)
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