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___飲まれちゃだめだ絶対に
何も読めない、何も悟らせない、このただただ綺麗な太宰さんの笑顔には
「あの、私、本当に記憶がなくて」
そんな風に濁されても困る、と戸惑いの意を込めて太宰さんを見上げると
ああもう、ほら、何でこんな近くに
「それは残念だなあ」
太宰さんが目を伏せ、ふう、と息を吐く
長いまつ毛の落とす影が切なげで、思わず手を差し伸べたくなる空気だった
「わ、私、本当に太宰さんに?」
告白、なんて言葉は、震える声には乗せることが出来なかった
「本当だったら……どうしてくれる?」
「本当だったとして、私が覚えてないので、全部なかったことにして下さいって云ったら___ 」
「 __A 」
耳元に寄せられた彼の唇
初めて私の名を呼び捨てにする、聞き慣れた筈の声がやけに鼓膜を揺らして
「君はそんな悪い子じゃないだろ?」
ずっと近かったから油断してたけれど、距離はまだゼロじゃなかったのだ
隙間はもっと詰められる
「まあ」と、声のトーンは変わらず低いままその端正な顔をふわり、傾けられて
「もしも君が本気でそう云うのなら」
いつの間にか熱い手を握り締められて
私の肩もとで、ふと息を柔らかく吸い直してからうんと妖しい声で囁かれたら
「その時は多少無理やりにでも、君を振り向かせるしかないだろうね、……悪いけど」
___ " 君を諦めてはあげられないから "
喧しい心臓を宥めることすら叶わなかった
太宰さんの表情は私からは見えない、だって、近過ぎるのだから
肺だけになんてとどまらず、胸までをも満たしていく太宰さんの香り
「本当はどうだったかなんて、別に良いじゃない」
良くない、ずるい
私を惑わせるだけ惑わせて、そのままかっさらおうとしてるくせに、本当にずるい
「意識のしっかりした状態で今一度、ちゃんとした言葉をくれれば、ね?」
「そ、れは……あの……」
『す』から始まるたった二文字
今ここで、この場で口にすれば、きっと私の想いも伴ったものと認められて
太宰さんの隣に居ることを公認される
「す__ 」
胸が痛いくらいに一鳴りした
「す、少しお時間頂きます!」
云うなり無我夢中で太宰さんの手を引いて、家の外まで追い出した
バタンッ、と
慌ただしく閉ざした扉の向こう、少し悔しそうな呟きなんて知らない
「ちぇ、逃げられちゃった」
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カズハ(プロフ) - 太宰さんの言葉選びが最高すぎてキュンキュンしました!!ありがとうございます!! (8月7日 3時) (レス) @page50 id: a9129a72cb (このIDを非表示/違反報告)
カカオ - すみません。「 やきもち日和」のパスワードは何ですか? (2018年6月8日 0時) (レス) id: bcda3478dd (このIDを非表示/違反報告)
神羅°(閲覧専用)(プロフ) - 最高です!!太宰さんがかっこよすぎてキュンキュンしちゃいました(歓喜)ありがとうございますw (2018年3月18日 1時) (レス) id: 7fad23618c (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 太宰さんかっこよすぎて、キュンが止まりませんでした!完結おめでとうございます! (2018年3月4日 1時) (レス) id: fe3c394919 (このIDを非表示/違反報告)
サッピー(プロフ) - この話最高でした!もう一途な太宰さん最高!ついつい顔がにやけてしまいました!完結おめでとうございます!! (2018年2月16日 12時) (レス) id: d2c3ca49e1 (このIDを非表示/違反報告)
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