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ゆっくり、そおっと
流れるような手つきを心掛けて、こっそり抱き締めた君の体は、やっと状況を理解したらしい
驚きに一瞬その肩が揺れて、ちらりと盗み見た可愛らしい耳は赤らんでいて
「前にも一度、抱き締めたことがあっただろう」
「あ、あ、あれは! 布団の中、だったから…!」
しどろもどろな声が聞こえる
こんな反応を示されると、僅かな期待と喜びが胸を
すっぽり私の腕の中に収まってしまう小さな君に、甘えるように擦り寄った
「君が事務員さん同士でばかり話しているから、
ずっと近づく機会を伺ってたのだよ」
「……本当、に?」
「やっと近づけた」
近づけたどころではない
今この瞬間、君との距離はゼロに等しい
柔らかな君の香りで満たされて、服越しにお互いの体温が伝わり合って
しかも君が嫌がらないのだから口角が緩む
後は、君が両手を私の背中に回してくれれば、文句なしなんだけどなあ
「……いつまでこうしてるつもりですか」
「君が許す限り?」
「…………」
「あ、やっぱり嘘」
___ " 私が満足するまで離さない "
*
「はあ……」
だらしなく項垂れるは布団の中にて
今日また一つ学んだのは、太宰さんが満足する時は訪れない、ということだ
あの後、どうしたら良いのか判らず、太宰さんに抱き枕にされる時間を過ごしたのだけど
過ごしても過ごしても、離れてくれる気を一向に見せなかった太宰さん
結局、耐え切れなくなった私が、何とかご自宅に追い返したのだった
「…………」
被っているタオルケットの、ほんのりとした温もりが体に触れる度に
____太宰さんとは違う
なんて当たり前のことを、頭に浮かべては比べてしまう莫迦は私で
二つともちょうど真上を指す時計の針
明かりがなくてもそれが見えるくらいには、夜闇に慣れた目が冴えていた
「…………眠れない」
明日も太宰さんを起こさなくちゃいけない
これはもはや、毎日私に課せられる任務であり、国木田さんの威圧と云う名の期待を背負っている
頭を冷やそう、気を紛らわそう
思い付きで風の流れるベランダに出た私は、即行で後悔することになる
「眠れないの?」
「だ、太宰さん」
「奇遇だね、私もさ」
隣のベランダに、元凶が酒を片手に佇んでいた
「ちょっと付き合ってよ」
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カズハ(プロフ) - 太宰さんの言葉選びが最高すぎてキュンキュンしました!!ありがとうございます!! (8月7日 3時) (レス) @page50 id: a9129a72cb (このIDを非表示/違反報告)
カカオ - すみません。「 やきもち日和」のパスワードは何ですか? (2018年6月8日 0時) (レス) id: bcda3478dd (このIDを非表示/違反報告)
神羅°(閲覧専用)(プロフ) - 最高です!!太宰さんがかっこよすぎてキュンキュンしちゃいました(歓喜)ありがとうございますw (2018年3月18日 1時) (レス) id: 7fad23618c (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 太宰さんかっこよすぎて、キュンが止まりませんでした!完結おめでとうございます! (2018年3月4日 1時) (レス) id: fe3c394919 (このIDを非表示/違反報告)
サッピー(プロフ) - この話最高でした!もう一途な太宰さん最高!ついつい顔がにやけてしまいました!完結おめでとうございます!! (2018年2月16日 12時) (レス) id: d2c3ca49e1 (このIDを非表示/違反報告)
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