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「もしもし、太宰さん?」
「何かな?」
「とぼけないで下さい」
ああ、また膨れっ面をして
せっかく綺麗なお顔なのに
だけどそんな表情も、可愛らしい、と思えてしまうのだから恐ろしいなあ
と、無意識に口角が緩んでいたのか、「笑って誤魔化しても駄目です、と鋭い声で云われてしまった
「夕飯食べてから、三時間経ちましたよ?」
「まだ三時間だけじゃないか」
「三時間も! です!」
こればかりは仕方ないよ、君と食卓を囲めるのが嬉しかったんだもの
君からのお誘いで、君の家で、それも君の手料理を
久し振りに食べた咖哩は酷く美味しかった
「お腹いっぱいだから動けないって云いましたよね?」
「うん、まあ」
「もう動けますよね?」
「……いいや?」
「太宰さん!」
食べ終わった皿はとっくに流し台に重ねられていて
ソファに彼女と二人、腰を下ろして、隣の彼女にもたれ掛かる
彼女はそんな私を、もどかしそうにゆらゆらと揺らした
「気が進まない」
「すぐ隣ですよ?」
「Aちゃんから離れるなんて、これ以上に気の進まないことってあるかい」
相変わらず彼女に寄りかかったまま、つらつらと本音を口に出した
すると、ほらね、可愛い彼女の可愛い照れ顔が拝見出来るのだよ
あーあ、また帰りたくない気持ちが大きくなる
「壁なんてなければ良いのに」
「壊したりしないで下さいよ?」
「それ良いね」
この場所が__君の隣が__居心地が良過ぎるからいけないんだ
君の家の隣じゃなくて、君の隣
そしていつかは、君をこの腕の中に収めてみたりもしてみたい
____はてさて、如何にして君を落とそうか
*
やっと、自分の家に帰ってくれた
流し台のお皿
机の上の二つのコップ
減りの早い鍋の中の咖哩
太宰さんの居た名残は至るところにあるけど、部屋は深い静けさに包まれている
そりゃそうだ、一人暮らしの女の部屋だもの
喋る相手も居ないのだし、音が無いのは普通のこと
そんな暮らしも始めてから結構長いもので、だから久し振りだった__一人静かなこの部屋を、少しでも寂しいと感じたのは
「……いや待て私!」
違う違う、違うから
別にこの寂しさを埋めるのは、太宰さんでなくたって良いんだから
太宰さんが隣に越してきてから、確かに彼との距離はぐっと近づいた、けれど
それは興味や関心であって好意ではないし
そもそも仕方なく___
____だめだ、大人しく寝よう
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カズハ(プロフ) - 太宰さんの言葉選びが最高すぎてキュンキュンしました!!ありがとうございます!! (8月7日 3時) (レス) @page50 id: a9129a72cb (このIDを非表示/違反報告)
カカオ - すみません。「 やきもち日和」のパスワードは何ですか? (2018年6月8日 0時) (レス) id: bcda3478dd (このIDを非表示/違反報告)
神羅°(閲覧専用)(プロフ) - 最高です!!太宰さんがかっこよすぎてキュンキュンしちゃいました(歓喜)ありがとうございますw (2018年3月18日 1時) (レス) id: 7fad23618c (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 太宰さんかっこよすぎて、キュンが止まりませんでした!完結おめでとうございます! (2018年3月4日 1時) (レス) id: fe3c394919 (このIDを非表示/違反報告)
サッピー(プロフ) - この話最高でした!もう一途な太宰さん最高!ついつい顔がにやけてしまいました!完結おめでとうございます!! (2018年2月16日 12時) (レス) id: d2c3ca49e1 (このIDを非表示/違反報告)
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