#ハンドクリーム ページ16
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「……どこ行くんだよ」
いつもよりゆっくりな目覚め、そのまま体を布団から離そうとした途端、そんな声と共に阻まれた
「俺から離れんな」
再び布団の中へと戻された体は、すぐ後に更なる温もりに包み込まれる
逞しい胸板と力強い腕、耳元を掠める寝息、蕩けそうな体温
まるで中也の抱き枕になった気分だ
「朝ごはん、作んなきゃ」
布団の中でもぞもぞ抵抗しつつ、動揺を全面に押し出した声で何とか主張する
けれど、抜け出せる見込みは全くなく
「勝手にそばから居なくなったら許さねえ」
おまけに、寝起きの低い声が、私の鼓膜をそれはそれは甘く揺らした
私を抱き締め直す中也
よりお互いが密着して服越しの体温が伝わり、そして同時に私の心拍が跳ね上がる
「手前の手、良い匂いすんな」
少しでも距離を取ろうと、その胸板や肩を、両手を使って押し返していたら
安らかな寝顔のまま、中也がふと呟いた
「中也がくれた、ハンドクリームのお陰だよ」
ドキンとまた音を立てた胸を抑え、依然として中也の腕の中で、小さくそう云い返す
なのに、中也は、もういっぱいいっぱいな私の気も知らないで
「手だけじゃねえ、手前本当良い匂いする、何か落ち着くし」
俺の好きな香りだ、なんて
嬉しさと恥ずかしさが相まって、胸の奥がぎゅうっとなった
「そ、そんな事より朝ごはん! 中也もお腹空いてるでしょ?」
誤魔化すように、話を変えた
これ以上甘い台詞を吐かれてしまっては、もはや心臓がもたないだろうから
けれど、必死な私の話題転換に、中也は
「空いてねぇよ」
「で、でも、」
ばっさり即答
困って言葉を詰まらせる私に、すると今度は、中也の方から口を開く
「腹が減ったらそん時にゃ、」
さらり、中也の手先が私の耳から首筋を撫でて、突然の甘い刺激に体が跳ね吐息が漏れて
「Aを食うから良い」
薄らと開かれた中也のその目は、覚醒前の獣のような光を宿して笑った
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留羽謝(ルーシェ)(プロフ) - 中也さんイケメンっ!!ありがとうございます!美味しかったです!!! (2018年2月8日 22時) (レス) id: 1767e80507 (このIDを非表示/違反報告)
世界のバカっこ!(プロフ) - 無事死亡。どんぐりさんほんといつもいつも私をキュン死させてしまう作品を作って……有難うございますっ!!中也さんかっこいい夢主ちゃん可愛い。最高でした(震え声) (2017年11月11日 12時) (レス) id: 391940a815 (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - プロポーズキターーー−−−−−−−−−−−−−ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!! (2017年11月3日 22時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - 中也かっこいい!つーかうぶかよ! (2017年11月3日 22時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
れんれんれれれ(プロフ) - 中也さんがかっこよくて!!中也さん目線の時はかっこよさと可愛さがあったのに夢主目線の時はただただ格好よくて………ドキドキしました!! (2017年11月3日 21時) (携帯から) (レス) id: f40e23ddec (このIDを非表示/違反報告)
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