【文スト】喜ぶ顔が見たくて

#麦わら帽子 ページ12

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潮風に揺れる麦わら帽子と共に、目の前に開けた爽やかな景色を眺める

青く高い空、青く広い海

雲やカモメの白がよく映える大きな青、そして何となく隣を見やれば



「＿＿＿なあ、それ、脱げよ」



艶めかしく光る蒼い瞳がそこに

あっという間に心の中が青でいっぱいになって、深く惹き込まれそうになった



「＿＿＿む、むり！」



けれど、一瞬の後我に返って、ブンブンと首を振って必死に否定の意を表明

何てったって、中也の云う " それ " とは、私が水着の上に着ているパーカーのことで

そんなの、絶対、脱げっこないのに




「ふぅん、素直じゃねえんだな？」



そんな言葉が聞こえた刹那、逞しい腕に体が抱き寄せられて、中也の綺麗な顔が視界を埋め尽くして

目の前には妖しく笑う彼の姿



「＿＿＿ん、」



唐突に口付けが降り掛かった

深い甘さと蕩ける熱が心も体も支配して、時々お互いの吐息が陽の下に零れて

名残惜しそうに唇が離された時には、くらりと溺れそうになっていた



「ふっ、可愛い顔しやがって」



心臓を跳ねさせるような台詞を囁き、中也がゆっくりその目を細めながら

遠慮なく手を伸ばしできたのは私のパーカー



「だだだ、駄目だって！」

「どうせ綺麗なんだから良いだろ」



抵抗しようにも、さっきのキスで抜けた体の力がまるで入らない

直ぐに中也の大きな手が、パーカーのファスナーを下ろし始めてしまった



「だ、だって、恥ずかしい…！」

「ふはっ、顔真っ赤だぞ＿＿＿って、」



突如として言葉を詰まらせた中也、息を呑むように私の水着姿に目をやり、しばらくして

ポンッと投げ返されるパーカーと



「＿＿＿ほら、またこれ着てろ」



同時に中也がそっぽを向かれてしまった

返されたパーカーをギュッと握り締め、震える声を絞り出して問い掛ける



「やっぱり、変だったんでしょ…？」



＿＿＿ら



「違えよ莫迦、すげえ綺麗だ、ただ、」




思いがけず食い気味の返事の後、中也の声が少し小さくなって、低くて真剣な響きを持って

波音の中で続きに耳を傾ければ



「俺以外に見せたくねえんだよ」



夕焼け色の靭やかな髪の隙間に見えた、中也の耳はほんのり赤く色付いていた



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