【文スト】喜ぶ顔が見たくて

＠アクセサリーショップ ページ2

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だーもう、手前ら皆して俺を見てくるな！

男が一人で立ち寄るような店じゃないって、そんなことは百も承知だっつーの



「けど、彼奴が、」



彼奴が、この店のアクセサリーが好き、だとか何とか云ってたんだから仕方ねえだろ

刺さるような視線の中で葛藤し、店をぶっ飛ばしてやりたい衝動に駆られた

目的の買い物が出来なくなるので、ぐっと堪える




「いらっしゃいませ、彼女さんにプレゼントか何かを買いにいらしたんですか？」

「お、おう……」



ふらふら店内をさまよう俺に、気を遣って店員が話しかけてきた

微笑ましそうに「健気な彼氏さんなんですね」なんて云われたことはスルーだ、スルー



「彼女さんはどんな方ですか？」

「＿＿＿彼奴は」



参考までに、と投げ掛けられた質問を、彼奴を思い浮かべながら真剣に考えた



俺の愛する彼奴は

無邪気で、純粋で、笑顔が眩しくて


愛おしさの塊みたいな性格してて、俺のためにいつも美味い珈琲を淹れてくれる、可愛い奴

俺が少し愛を囁けば、耳まで真っ赤にして照れる所も可愛くて仕方がない


ってこれ、全然店員の求める答えになってねえ

口に出せる内容じゃねえし、お陰で今すぐ彼奴に会いたくなっちまった

結局、苦し紛れに店員に伝えられたのは



「…………髪が、綺麗だ」



たった一つだけ

本当にたったそれだけなのに、顔が熱に染まっていく感覚を覚える

あーくそ何だこれ


「髪の綺麗な方なんですね」

「おう」


すると輝き出した店員の表情



「でしたらちょうど、新作の髪飾りがございます！ 是非お手に取ってみて下さい！」



と、差し出された色違いの髪飾り、夏らしく貝殻をモチーフにしたそれは、なびく綺麗な彼奴の髪に映えそうで



「ピンクと水色がございます、女性はピンクが好きな方が多いと思われますが」

「いや、彼奴は水色の方が好きだ」




思わず、食い気味で呟いていた

可愛らしいピンクではなく、透き通った水色の方が彼奴の好みだ、って知っていたから



「彼女さんの好みをちゃんと判ってらっしゃるんですね、素敵です」



素性も知らねえ店員に褒められるとはな

俺は彼奴の彼氏だ、だから彼奴の好みくらい把握していて当然だろ

そう思いつつ、相変わらず微笑ましそうに俺を見る店員に悪い気はしないでもない



「髪飾りは一旦保留だ」

「気が向きましたら、またお越し下さい！」



髪飾りに心惹かれはしたが、またもや決めかねて店を後にした



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