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「君たちは二人とも『ナカハラ君』だったねえ」




首領の言葉を受けて、帽子の彼を思わず二度見

相手も似かよった反応をしており、私と彼の視線が再び衝突した

つまるところ、私と彼はどうやら同姓を持つらしい

まるで、面白い偶然、とでも云いたげな首領のにこにこ笑顔

愉しそうで何より、だけど私は、否、私達は、何とも形容し難い気分である

首領の両脇に控えたまま、ひたすらに気まずい




「……首領、それで、さっきお呼びになられたのはどちらのナカハラで?」



そんな中、有り難いことに、ナカハラさんが先立って云い出てくれた

首領は少女と手を繋いだまま、思い出したように「そうだった」と声を漏らし




「さっき呼んだのはこっちのナカハラ君だよ」




ひらりと首領の手が指したのは、私ではない方のナカハラさん

帽子を胸に当てる彼は、短く了承の返事をした

ありゃ、私じゃなかったのか

なんて思いながら、首領の手の先にあるナカハラさんの姿に目をやった



…ら




今の今まで、ちゃんとナカハラさんのことを見ていなかったからだろうか


偏に首領を見上げる蒼眼が、夕焼けのような色みの髪に映えていて

小柄な割に逞しい体つき

少年のようでいて、何処からか漂う気品


軽い気持ちで目を遣った私は、見事にその目を奪われてしまったのだった


こんな顔の良いマフィアが居て良いんだろうか

少しの驚きと大きな感嘆が入り混じった深い息が無自覚のうちに零れ出る



「リンタロウ、ケェキはまだなの!?」

「ああエリスちゃんごめんねえ、今すぐ部屋に戻って用意させるからねえ」

「早くして、もう!」



またもや少女に強請られる首領

などと云う光景は、最早意識の外、だったので



「ごめんよおエリスちゃん、……ナカハラ君は私と一緒に執務室まで来給え」

「はい」

「ナカハラ君は気にせず帰ってくれて構わないよ、すまなかったね」



…………ん?

もしや今呼ばれたナカハラって、私のこと?

曖昧な記憶を頼りに首領の言葉を反芻、返事する気配のないナカハラさんをチラ見、の後




「…っあ、ハイ、失礼致します!」




一瞬の間を経て、何とか返事を絞り出した

危なかった、と、心の中で冷や汗を拭う

再度お辞儀し直した私のそばを、首領と少女が通り過ぎて、それに続くナカハラさんが

___すれ違いざま、確かに云った




「ふっ、見惚れてんじゃねぇよ莫ァ迦」




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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
- 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:どんぐり | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年9月13日 23時

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