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甘い甘いパンケーキは、全部残らず、太宰さんの手によって私の口へと運ばれた
満たされたのはもちろんお腹だけではなくて、騒がしい胸からは今すぐにでも " 好き " が溢れてしまいそうだ
「……太宰さん」
「ん?」
「あ、後、どれくらいですか」
何がかと云えば、それは、覗いてみてもまだ底が見えそうにない、太宰さんの珈琲カップの中身のこと
もうすっかり冷めてしまっているのに、まるで飲みきる気がなさそうなくらいに
太宰さんは、とてものんびりそれを口にしていた
「うーん、そうだね、Aちゃんは、あとどれくらい私と居たい?」
かと思えば
また降ってきた期待を煽るような問い掛け
だから本当そういうの、ずるい
だって、じゃあ例えば私が " ずっと " って云っても叶えてくれるんですか?
太宰さんは、私が本気で答えても嫌がらない?
「……別に、どれくらいでも」
まあ、そんな密かな願望なんて、この口が素直に吐き出してくれることはないけれど
と、若干自嘲めいた気分に襲われる私
隣で太宰さんが「ふぅん」と声を漏らした
「なら、私が居て欲しいだけ居てくれるよね?」
次の瞬間、残りの珈琲全てが、そう云って弧を描いた太宰さんの口に含まれて
何もよく判ってない私の前に、空っぽと化したカップが差し出されて
「とりあえず君の今日一日を貰おうかな」
「え、そ、それって」
「うん、今日はずっと私と一緒ってことだね」
思わず見上げた太宰さんの目は、私を見つめ返して楽しそうに細められた
そのまま頬杖を突く太宰さんからは、依然として奪われた目を離せないまま
____『ずっと』『一緒』
それは、ついさっき私が切望したものそのまま
正直になれない私の、願って止まないことだけど
「そうとなれば、早く店を出よう」
私の返事も聞かないで立ち上がる太宰さん
彼のと結び付けられた手に引かれて、私の体も持ち上がるように椅子から離れて
少しよろめいて繋がれた腕を頼れば、太宰さんの何故か嬉しそうな微笑みと目が合った
「ど、どこへ行くんですか……?」
「二人きりになれる場所だよ」
にこにこと私の質問には答えるくせに、お会計の際は私を無視して全部支払ったりして
またずるい優しさを見せ付けられて、胸が音を立てる私に太宰さんは
せっかく二人で居られるんだもの、と
「探偵社になんて、戻る訳ないだろう」
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桜月(プロフ) - 完結、おめでとうございます!!太宰さんの仕草や言動のひとつひとつにすごく胸がきゅっとなって、、めちゃめちゃキュンキュンしました!とても読んでいて楽しかったです!! (2021年10月11日 0時) (レス) @page28 id: cb743e60b6 (このIDを非表示/違反報告)
千桜里 - はじめまして!太宰さんの心情や行動にとてもドキドキしました!!本当に面白かったです! (2020年9月29日 12時) (レス) id: d647e09f50 (このIDを非表示/違反報告)
ヲタ娘(プロフ) - はじめまして。ヲタ娘です。すごく胸がキュゥ……として、フワフワっとしました! とっても面白いです! (2019年3月4日 20時) (レス) id: 737d873cb6 (このIDを非表示/違反報告)
桜紅葉 - 完結おめでとうございます!リクエストよろしければその後の話が読みたいです。お願いします。 (2018年3月7日 6時) (レス) id: 54de0e772b (このIDを非表示/違反報告)
月ノ輪(プロフ) - 完結おめでとうございます!すっごく可愛くて胸きゅんばっかしでした!他の作品も楽しみにしています♪ (2018年2月22日 13時) (レス) id: 3aab0973d9 (このIDを非表示/違反報告)
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