悲しみと愛に溺れる【ハイキュー!!】短編集

黒尾鉄朗×サイカ※リクエスト ページ13

昔、嫌なことがあると太ももを切った


理由は流れる血を見ると冷静になれたから


そしてバレにくいから



今はもう切っていないけど、今でも不安になると太ももに手がいく


それに寒くなると古傷が疼いて痒くなる








「調子乗ってる」


「男好き」


「ヒロインぶってる」



そんなのはもう言われ慣れた



でも、今日のは刺さったな〜



「“お前なんか必要とされていない”」



そんなの、自分でも常々思うよ



不安をかき消すように太ももに手がいく


痒い、痛い、痒い



気が付けば太ももに爪を立てて掻きむしっていた


『...やっば、』


ティッシュで適当に止血をする


まぁ、長ズボン穿けば問題ないでしょ









『...長ズボンないじゃん!!』


なんで今日に限ってｯｯ


短パン、


ギリ見えないかな



とりあえず時間がないので短パンを穿いて部活に向かった









「ちょぉ〜っといいかなAさん？」


スポドリを作っている途中に黒尾に話しかけられる


わざとらしくニコニコしている顔が気持ち悪い


『な、何すか』


「その太ももの傷は何かな？ん？

俺の納得のいく範囲で説明よろしく」


あくまで笑顔な黒尾に少し後ずさる



『こ、転んだ』


「無理があるだろ


まだそんなことしてんの」


『ち、違うよ？

...ちょっと痒かっただけ、最近は切ってない


これはほんと』



黒尾とは一年の頃からの付き合いで、この傷のことを知っているのも黒尾だけ


「何がそんなに辛いわけ」


さっきまでニヤニヤしていたくせに、急に真剣な顔になって


黒尾の真っ直ぐな目


嫌いだ、


言うつもりがないことまで言ってしまう


『...い、いらないって、私っていらないんじゃないかなー、って気がして、、、





...必要とされてない、かも、って、』



あくまで笑顔で


冗談っぽく




言うつもりだったのに、



最後の言葉に詰まってしまう


黒尾の顔を見るのが怖くて俯いていると






ﾊﾞｻｯ



『⁈』


頭にくる重み


「くだらねぇこと言ってないで早くそれ穿いて戻ってこい！！

スポドリもボール出しも記録も、することいっぱいあるんだからな！」



何も言わないのは、きっと黒尾の優しさ


仕事をくれるのも、きっと黒尾の優しさ



『分かってるよ！！』



フワッと香る黒尾の匂いはひどく安心した

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