疑問 ページ21
囲炉裏の火をぼーっと眺めていると、台所から食欲を唆る匂いと共に、食材を切る音や二人の賑やかな笑い声が聞こえてくる。
(楽しそうだな……)
まるで禰豆子にお姉ちゃんが出来たようで、何だか嬉しくなった。
(禰豆子…お前には寂しい思いを沢山させてしまっていたよな…)
父さんが亡くなってから、俺は父親代わりに働くようになった。
その間、母さんが家を守っていて、禰豆子は弟達の面倒を見ていた。
本当だったら今頃、禰豆子と同じ年頃の子達は恋をしたり着飾ったりするだろうに。
(俺はお前に何もしてやれなかった…)
手に力が籠り、隊服のズボンを握り締める。
(兄ちゃんが必ず、人間に戻してやるからな)
そしたらきっと、禰豆子も幸せに暮らせる筈だ。
『…ろ…じろ……たん、じろ!』
俺はハッとした。
気付けばAが心配そうに俺の顔をうかがっていた。
炭「す、すまない!少し考え事をしていた!」
そう言うと、Aは俺の前に朝食が乗った膳を置く。
『どぞ!』
炭「いただきます!」
炊きたての白米と、鮭の塩焼き、じゃがいもの味噌汁、胡瓜の味噌漬け。
やはり、Aの作る物はどれも美味しかった。
朝食を食べ終えると、Aが入れてくれた茶を啜った。
禰「む〜!」
『ふふっ』
禰豆子はAにじゃれていた。
禰豆子に気を遣ってか、家の戸は全て閉じられており、陽の光が入り込まないようにされていた。
そのお陰で、禰豆子は動く事が出来た。
戯れる禰豆子に優しい眼差しを向けるA。
その姿を見て、自然と俺も微笑む。
ふと、Aと目が合った。
Aは菫色の綺麗な瞳で俺を捉える。
そうして、禰豆子に向けた時と変わらぬ、その優しい眼差しで微笑んだ。
炭「……っ」
そのあまりの美しい表情に、思わず息を呑む。
嗚呼、本当に君は鬼なんだろうか。
そんなにも優しく美しい表情が出来るなんて、まるで鬼とは思えない。
ドクンドクン、と高鳴る胸の鼓動が脳にまで伝わってきそうな程響いていた。
胸が少し擽られるようなこの感じは、一体何だと言うのだろう。
君に会ったあの日から、ずっとだ。
きっと何かを伝えたいのに、何を伝えれば良いのか分からない。
(俺は……君に何を伝えたいのだろう)
心の中でそう呟いてみるも、答えは出てこなかった。
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豆大福 - はじめまして!そのようなお言葉を頂けて嬉しいです!体調管理も整えた上で更新します。貴方様もご自愛ください。 (2021年9月17日 23時) (レス) id: dfee756c2e (このIDを非表示/違反報告)
さら - はじめまして!!このお話凄く大好きです!!炭治郎くんめっちゃ大好きです!!お話続き楽しみにしてます!!コロナで大変ですが、お体には気を付けてくださいね!! (2021年9月13日 23時) (レス) id: d237d559b7 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア☆姉貴 - 豆大福さん» 太陽は克服しているため、日中でも外出は出来る。屋敷には藤、薔薇、コスモスの花が植えられている。 (2021年6月2日 18時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア☆姉貴 - 豆大福さん» 青葉の口ぐせは「教えてもらうんじゃない!!!!見て盗め!!!!」 (2021年6月2日 16時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア☆姉貴 - 豆大福さん» そして、漆ノ型の雪の癒しは自分の怪我と味方複数の怪我を癒すため、かなりの体力を消費する。 (2021年6月2日 14時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆大福 | 作成日時:2020年8月20日 0時