ちいさな奇跡のはなし 2 (ページ9)

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「2300とちょっとですね、想像してたよりもあったかな」

そうしてあっというまにまた別の手に抱かれていく我が子。

先生とあれやこれやと話をしていた看護師さんが、
てきぱきと何か準備をしている。

「念のためね、前にも話したけどちょっとだけ保育器のなか入るね、いろいろ見るからね。機能的にももう心配ない程度だと思うんだけど、ね、ちょっとだけ早く産まれたからね」

余韻に浸る暇もなく別の部屋へ移動する我が子を眺めて、

そこからはもう何もかも一瞬だった。

あれやこれやと一つずつこなされていく作業をぼんやりとした気持ちで見届ける。

確かに自分に起こっていることなのに自分のことではないようで、

なんとも不思議な気持ちだ。

何度もこの瞬間を迎えるためのシミュレーションをして過ごしてきたけれど、
正直そんなシミュレーションを役立てる合間もなく、
その時は突然やってきて突然過ぎ去っていった。

ああ、こんな感じだったんだな、

一気に降りかかってきた大きな経験値もひとつひとつを感じている暇なんてものはなく
いつの間にか知らないうち手に入ったような気がする。

それでも、数十分で処置の済んだ下半身に今頃感じる鈍い痛みが、

その経験を物語っていた。

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