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その日の試合は打撃戦、延長12回サヨナラ勝ちの長丁場。
くたくたの身体を引きずって、試合が終わっても溺愛親父だのキャラ変しただのさんざんいじくり回されて、さらにくたくたになって、帰路につく。
遅くなってしまった。もう、日付を跨ごうかというところだ。
次のデーゲームは明後日。
結局、チームメイト数人が、その日の試合後、我が家に来ることになった。
───A、うまいこと寝てるかな。
というのも、ほのかが産まれて一週間ほど。
産まれてすぐ、三日目くらいまでは、こんなに寝てて大丈夫か?と思うくらいには寝ていたという我が子。
【赤ちゃんは、寝るのと泣くのが仕事】なんて言うけれど、【泣く】の要素が全くと言っていいくらい無かった。
全くというのは言い過ぎかもしれないが、もう夜なんかは一時間おきに目覚めるなんてのを覚悟していたこちらにしてみれば、ちょっと拍子抜けだよね…なんて、Aも言っていたくらいにして。
…まあ、たった三日くらいじゃわからないもんだよな、というのが結論だったわけなんだけど。
三日を過ぎたあたりから、絵に書いたような新生児との生活。
数時間、時には数十分おきに目を覚ます我が子。
それは産まれる前に想像していた、覚悟していた以上のもの。
…と言っても、病院は来院者の宿泊は(父親である俺であっても)できず、それができたとしてもまさか自分から母乳が出るわけでもなく、なんの力にもなれない、なれなかったのだけど。
産まれる前も産まれてからも、やっぱり父親は無力なのだ。
Aはいつも「いてくれるだけでいい」なんて言うけれど、とにかく、母親の強さってすごいなぁと、ただただ頭が下がるばかりである。
今日からは、親子三人。
はじめての夜。
それでも数日後には再び遠征が待っていることが、仕方の無いこととはいえ心底せつない。心苦しい。
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作者名:まいち | 作成日時:2017年9月15日 3時