第237話ですよー ページ7
懐に伸ばした右手と殴ろうとした左手を拘束され、蹴ろうとした右足も押さえつけられた。
左足だけでどうにかするのは厳しいだろう。
「...後悔してる?助けたこと」
思わず笑ってしまった。
『どうして後悔なんかしなきゃいけないの?』
「あんなことしなければ、君は屈することはなかった。飢えた野郎共は助けてもらったことに気付きもしない。それでいいの?」
『知らないからいいんでしょう、何もありませんでしたが一番の平和提供ではなくって?別に私諦めてないし』
ふうん、と男は品定めするように私を見始める。不愉快なのは事実。些か感じているこの、恐怖もまた、事実。
「そっか。健気な志はステキだね。じゃあ俺の子供産んでくれる?」
『.......は?』
本当に、何を言っているのか分からなかった。
コイツ、今、なんて?
動揺がわかりやすかったんだ。男は手を離すと私の服を剥き出した。
『へっ、えっ、ちょ...ちょっと、まってやめて』
どっと押し寄せる恐怖、力の入らない手、どうしようどうしよう。
「大丈夫、君は強い。俺との子ならきっともっと強い子供を産めるよね。だから腹だけは絶対殴らないようにしてたんだ」
半着が脱がされ、腹を直に愛撫する手。
怖くてどうにかなりそうだ。経験もないし、こんな状況なんてなったことがなかった。
ああそういえば、人ってこうも激しく震えるんだったな。僅かに冷静な部分は、そんなろくでもない事しか考えなかった。
「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ。リラックスした方が孕みやすいとかなんとか言うし、優しくするって」
頭、頬を撫でる温かい手が怖い。強い力で押さえ込んでないのに、私の上にいるということが怖い。これからされるであろう事が怖い。何もかも、この人の全てが怖い。
「ね?大丈夫」
口を塞がれたことで、私の抵抗力も皆無になった。真選組一番隊副隊長ともあろう私が、情けなく震えることしかできない。貞操だけでなく矜恃も何もかも奪われるのだろう。きっと仲間に顔向け出来ない。
静かに泣き出す私をあやす行為もまた、怖かった。
人に抱きしめられるのってこんなにも怖いものなんだ。男の手が、背中に触れて、
「...完治はしなかったんだね」
背中を走る、大きな傷跡。一本の、深く刻まれた、背中半分にある傷跡。
傷を辿る、温かい手。
___転がった脇差の鞘を肘で抑え、足の指で柄を握り抜刀した。
気配に気付いた男は飛び退く。
646人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
練紅龍(プロフ) - りるるさん» ありがとうございます!夢主ちゃんよかったね!!私も読者様大好こ (2023年3月27日 18時) (レス) id: 2fe40886f6 (このIDを非表示/違反報告)
りるる - 夢主ちゃんが可愛すぎて ちょっともう…尊いですねはい。まあとりあえずアレですよアレ、作者様大好こ (2023年3月25日 2時) (レス) @page22 id: bfd3ef8afe (このIDを非表示/違反報告)
練紅龍(プロフ) - 雪さん» 長い間お待たせ致しました...喜んでいただけて嬉しいです!スマホが無事でありますように! (2022年10月31日 16時) (レス) id: 817163acd5 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - 久しぶりに見に来たら更新されていてスマホ投げました。嬉しいです!! (2022年10月25日 20時) (レス) id: 6eb434b1d5 (このIDを非表示/違反報告)
練紅龍(プロフ) - 服は歩けませんね...着てください... (2022年10月25日 13時) (レス) id: 817163acd5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ