第245話ですよー ページ16
*
万事屋のインターホンを押して、出てきたのはでかすぎる犬だった。
あー、えーっと。
『...定春、くーん。ご主人様いらっしゃいますー?』
「わんっ」
愛らしい顔で尻尾を振る定春は、ある意味番犬の役割を果たしているのかもしれない。でも鍵くらいかけときなさいよ、不用心な。
『...留守なのか...いつ頃お戻りになりますか?』
「わんっ」
まあ生き物飼ってるなら夜には戻ってくるんだろうけど。
定春に手を振って、とりあえず吉原に向かって歩き出す。
それにしても困ったな。そろそろ仕事に復帰するから、刀を早々に手元に置いておきたいのだが。もしかしたら心無い輩に売り飛ばされているかもしれない。吉原の自警団が持っているかもしれない。
何れにせよ、なんとかして取り戻さなければ。あれは母が大切にしていた刀だ。飾りっぱなしだったけど。このまま行方知れずとなれば、あの世で怒られるに違いない。
...いやだから高杉晋助くんも、私が死ぬ前にさっさと刀返して欲しいんですけど。
仕方がない、近藤さんに怒られるかもしれないけど一人で行くか。いやでもヤバいやつに遭遇して死ぬのはちょっとな...
「おばちゃーん酢昆布10個」
聞き覚えのある声、滅多に聞かない酢昆布10個。
ふと見渡せば、つい最近も見たサーモンピンクの髪が目に入る。
『神楽ちゃん、久しぶり』
「あっA!ちょっと聞くネ、このおばちゃんツケがあるからって売ってくれないヨ!」
あーあーそりゃ当然だわな。銀さんちょっとこの子の教育どうなってんの。
聞けば、酢昆布50個は最低でも滞納しているらしい。このおばちゃんもオマケとかで数個は見逃してくれてるのだろう。50個いったら払うまで売らないと決めていたとも見れる。
『...銀さんのとこまで案内してくれるなら、酢昆布60個分私が払うよ』
「本当か!?じゃあおばちゃん、酢昆布50個追加ネ!!」
『違うよツケの50個と今の10個だよ戻してきなさい』
*
くっちゃくっちゃ、神楽ちゃんが酢昆布を食べる音だけ聞いていたい。現実逃避したい。
「もう少しアル」
江戸の町中と変わらぬ様子で闊歩する神楽ちゃんの後ろを、とぼとぼついて歩く。
陽の光が差したとはいえ、風紀が良くなったとはいえ、どこからどう見ても色街。どこからどう見ても吉原。
待って銀さんお楽しみ中なの?どうして神楽ちゃんはそんななんでもないような顔して歩けるの?こんな未成年出禁の店中歩けるような子だったとは...
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練紅龍(プロフ) - りるるさん» ありがとうございます!夢主ちゃんよかったね!!私も読者様大好こ (2023年3月27日 18時) (レス) id: 2fe40886f6 (このIDを非表示/違反報告)
りるる - 夢主ちゃんが可愛すぎて ちょっともう…尊いですねはい。まあとりあえずアレですよアレ、作者様大好こ (2023年3月25日 2時) (レス) @page22 id: bfd3ef8afe (このIDを非表示/違反報告)
練紅龍(プロフ) - 雪さん» 長い間お待たせ致しました...喜んでいただけて嬉しいです!スマホが無事でありますように! (2022年10月31日 16時) (レス) id: 817163acd5 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - 久しぶりに見に来たら更新されていてスマホ投げました。嬉しいです!! (2022年10月25日 20時) (レス) id: 6eb434b1d5 (このIDを非表示/違反報告)
練紅龍(プロフ) - 服は歩けませんね...着てください... (2022年10月25日 13時) (レス) id: 817163acd5 (このIDを非表示/違反報告)
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