嘘と花束【ARS】 Part4 (ページ8)

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自分の気持ちがわからない。
今どうしたいのか、これからどうなりたいのか、全く考えられなくなってしまった。

「……お邪魔しました」

それでも、今は自分の部屋に戻らなくちゃ。
ドアノブに手をかけて、ガチャ、という音と共に、ドアを開いた。

そして、二宮さんに背を向け、部屋を出ようとすると……

「A」

後ろから、私の名を呼ぶ声がした。
返事の代わりに、ゆっくりと振り返る。

「……俺、本気で奪いにいくから……Aのこと」

表情、声、眼差し。
その全てが、真剣そのものに見えた。

無情にも、ドアはひとりでに閉まっていく。
私も二宮さんも、それを止めることはしない。

……ドアが閉まる直前、ニヤリ、と笑ったように見えたのは、幻だったのかな。

ガチャン、と重厚な音を立てて、扉が閉まった。

……とりあえず自分の部屋に、戻ろう。

もう一度、自分にわからせるように考えて、すぐ隣のドアへ入った。

……それにしても。
この数時間の間に、私はどれだけドキドキしなくちゃならなかったんだろう。

そういえば……

少し前に、二宮さんに言われた言葉を、思い出した。

『……"特別"の意味、わかってるでしょ』

『……さっき言ったこと、全部本気だからね』

もしかして、あの時から……？
だから、櫻井さんのことにも、気がついたのかな。

……なんて考えても、ほんの数分前まで起こっていたことを思い出して、ただ赤面するだけだった。
本当に、なんで私なんかを……？

国民的アイドルの嵐のメンバーが、私を想ってくれるなんて、信じられない。

……でも、私の身に起こることは、全て現実。
甘い言葉も、抱きしめられた体温も、優しいキスも、全部、本物。

ただ思い出すだけで、胸の奥が高鳴りを増す。
数ヶ月前は、こんな状況になるなんて、考えもしなかったのに。

……二宮さんがなぜ私のことを好きだと言ってくれたのか、わからずじまいだった。
理由を聞こうにも、そんなこと、面と向かって言えるわけがないし……

ベッドにごろんと横たわって、考えを巡らせてみる。
……目、また冴えちゃったな。

部屋の照明を、ベッドサイドのランプひとつに絞って、とにかく少しでも眠れるようにした。
でも、程よい室温と暗さのおかげで、だんだん眠りに落ちそうになっていく。

……明日、早く起きなきゃ。

ぼんやりと考えているうちに、私の意識は薄れていった。

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