・ 愛してたい。 ページ47
嘘を…ついている。
アラナの言葉が正しい。
守ってあげるなんて言っておきながら、
私は今まで一度も彼女を守っていないじゃないか。
今回のように守ろうとした自分の行動が、
拙く不幸を呼ぶこととなる。
───私に拾われたリイナが可哀想だ。
私はリイナから手を離した。
刹那にして魅せる彼女の悲しそうな表情に、
胸に潜む何かが私の心臓を締め付ける。
´
´
´
………あぁ、なんだそういうことか。
その表情を見て、はっきりと理解した。
私の矛盾した行動が何処から
始まってしまったのかを。
あのときリイナを拾った私は彼女の
『異能』しか見ていなかった。
異能を使わせ、記憶を失わせ、依存させる。
いつかは…
私に『生きる意味』を教えてくれることを信じて。
だが私が17歳になった途端、
リイナへのその習慣を辞めさせた。
この、人間らしい感情が生まれたからだ。
苦しさに泣きじゃくるリイナに
いつもくる今日という日に怯えるリイナに
──そんな表情をしてほしくない。
私に光るような笑顔を向けるリイナに
私に何をされても強い執着心を抱くリイナに
───『✗✗✗』
だから私は『彼女』と別れたんだ。
だけど、…………もう遅いんだ。
遅すぎたんだよ、気づくのが。
『貴方に拾われたリイナが可哀想───』
………彼女を優しく抱き寄せる。
「………え」
リイナの油断していたかのような声が
私の胸元から耳へとそっと届いた。
そうして高鳴るのは彼女の心臓の音。
それは、あの頃のリイナとは全く別のもので……私を受け入れるかのよう。
理解していた筈のリイナの『依存』という気持ちを改めて実感させられた。
「……っ」
……不意に私に届いたのは彼女の香り。
あの頃、意識していなかったものだ───
私の感情は……何故か、大きくなろうとした。
あぁ、この感情を───
今の私には隠すことができない。
私は彼女を強く抱き締めようとする。
でも、私の心は───それを拒んだ。
なぜなら私は、これからこの感情を……
隠さなければならない。
そして、忘れなければならないからだ。
…リイナを拾い、依存させ、
彼女を
君自身を『愛してしまう』資格なんて無いだろう?
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作者名:kana | 作成日時:2021年8月23日 20時