・ 自問自答 ページ37
〜太宰サイド〜
───私に拾われたリイナが可哀想だって?
「………そんなこと、ある筈がない」
自問自答。
首領の部屋から出て、マフィアのアジトを後にした私は早足でいつものバーに向かう。
辺りは暗闇に包まれ、私を嫌うかのように怪しい雲が空に広がっていた。
輝く星は見えなかった。
唇を噛んだ私は苛立ちを感じていた。
アラナから言われた………一言で。
こんなこと自問自答していても仕方がないことなんて、私は十分理解の上だ。
それでも私の脳はあの言葉を手放そうとしない。
『守ってあげるなんて嘘もついて……。
貴方に拾われたリイナが可哀想───』
「………ッ!!」
嘘はついていない。
私はリイナを守っているんだ。
今回のプリズナーの件もそうだろう?
リイナに異能を使わせないために、
代わりに芥川君を………
…………………
違う、そうじゃない。
私がリイナを拾った理由は
『異能を愛してしまった』からだ。
だから、『あの子』も利用してリイナに異能を無理やり使わせたじゃあないか。
───17歳の時まで。
私は『あの子』と別れてからリイナに異能を使わせることがなくなっていた。
なら、どうして今の私はリイナに異能を使わせたくない?
これじゃあ本来の目的を見失っている、
只の子供みたいじゃあないか──
数々の自問に本当の答えを見いだせなかった私の足取りはだんだん重くなり、遂にはその場に立ち止まった。
もうすぐ、バーにつくはずなのに私は、何者かに邪魔をされたかのように進めなくなる。
……その時だ。
ふと、私の視線の先に階段をあがり、バーから出てくる二人の女性が目に入った。
珍しい客人だ…
と、虚ろな目で彼女らを見つめる私は
その目を辞めさせられることとなる。
その二人の女性はどちらも、見かけたことがあったからだ。
目を見開いた私は……
私に強い執着を抱く彼女の名前を呼んだ。
「リイナ………?」
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作者名:kana | 作成日時:2021年8月23日 20時