泣き虫継子 弐【宇髄天元】

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ーー杏寿郎sideーー

「もっと戦おう」


鬼がそう言う。


“死ぬな”と。


炭治郎の様子を見に来た杏寿郎。だが炭治郎は脇腹の傷が深く重症だ。そんな中現れた鬼。しかも上弦の参。今まで沢山の鬼を滅してきた。


「生身を削る思いで戦ったとしてもすべて無駄なんだよ。杏寿郎」

鬼は独り言のようにそう言うと、自身の肩から胸の辺りに触れた。先程杏寿郎が命をかけて喰らわせた刀傷だ。

それも鬼の再生能力ですぐに完治してしまう。

鬼が言う。お前はどうだ、と。潰れた左目。砕けた肋骨。傷付いた内蔵。もう、取り返しがつかない。鬼であれば治るのだ。鬼ならばそんな傷かすり傷だ、と。


「どう足掻いたって人間には勝てない」


分かってる。


そんな事分かってる。柱がどれだけ強靭な体とは言え、鬼みたいな再生能力は無い。


後ろで炭治郎が自分に加勢しようと無理に体を動かそうとしているのが気配で分かる。


ふと、杏寿郎は音柱・宇髄天元の泣き虫継子を思い出していた。


血反吐を吐くような思いで強くなったA。


あんなにか弱い少女だったのに、いつの間にか立派な隊士に成長していた時はどれだけ喜ばしかったか。


乗客を守り、気を失ったAに杏寿郎が起こそうと声をかけても起きなかった。杏寿郎はAの事を思う。


ーー煉獄さんーー


ーー私、いつか師範や不死川さん、煉獄さんみたいな強い柱になりますーー


煉「俺は………俺の責務を全うする！！ここにいる者は誰も死なせない！！」


杏寿郎は自身の内にあるすべての闘気を燃やし、誰でもない、己自身にそう言い聞かせるように叫ぶ。

煉「(一瞬で多くの面積を根こそぎ抉り斬る……)」


炎の呼吸 奥義


全身に燃え滾る闘気を一気に解放する。


煉「(心を燃やせ。限界を超えろ)」


俺は炎柱・煉獄杏寿郎！！


煉「玖ノ型 煉獄！！」
「破壊殺 滅式！！」


炎の龍を象る斬撃を、鬼の拳が迎え撃つ。


炭「煉獄さんっ！！！」


『………っ、煉獄さん！！』


煉「(A！？来てたのか……！？)」


目の端にAがいた事に驚いた。


だが杏寿郎は攻撃の手を休めない。


煉「うあああああ！！！！」


腹の底から叫び声を上げ、杏寿郎はそのまま斬り上げた。

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