09 択ばず ページ9
パタパタパタパタと扇がれていると
こんなことを考えだした。
「うなぎってこんな感じなんかな…？」
「は…？」
「…お、コハクが戻ってきたな…笑」
立ち上がろうとしたが、まだまだ本調子ではないみたいだ。
「レト。」
「どした？」
「ん。」
近寄ってきたレトルトに両手を広げた。
「え、何？」
「手、グイッてやってくれればいける。」
「あ〜はいはい。」
両手を掴んで上に引っ張りあげてくれた。
「さんきゅ。」
椅子に腰かけると
目の前にはニコニコと笑みを浮かべたフジくんが座っていた。
「はい。」
「言いたいこと…もう分かってるよね？」
「はい。もう無茶しません。」
口先で述べた。
「…コハクは自分の発言ちゃんと覚えてる？」
「え？あ〜まぁ。大体は…」
「じゃあ、俺が仕事辞めるときに
コハクが何言ってたか覚えてる？」
記憶の中を探し出した。
「頑張りすぎないのも大事…。」
「そうだね。
じゃあ、何故その中にコハク自身は入ってないの？」
まさかこんな形で返ってくるとは思ってもみなかった。
ダメだなぁ…私。
何故、分からなかっただろう。
「…ごめん、ちょっとずつ治すようにするよ。
だからストッパーになってくれないかな？」
「喜んで。じゃあもうこの話は終わりね。」
空気が一気に軽くなる感覚。
そのあとも1時間ほど
私はこまめに水分を取りながら雑談をした。
このあとは打ち上げ。
会場をもうそろそろ出るというときに
うっしーに話しかけられた。
「…まだ本調子じゃねぇだろ。」
椅子から立ち上がるときに
体のだるさを少し感じて嫌気がさしたのだ。
「案外…牛沢さんがこういう系になると鋭くて
ちょいこわなんですけど。」
うっしーの前職的にそうなりがちなんだろうとは思ったが。
「そりゃ…まぁ、目の前で倒れられたら困るからな。
この後の打ち上げ、行くんだろ？
今日だけは絶対…酒、飲むなよ？」
「はい。今日は飲みません。」
――――――
河海は細流を択ばず
↓
度量の広い大人物は、どんな人でも受け入れるというたとえ。
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作者名：みこと | 作者ホームページ：http://なし)ー
作成日時：2022年6月14日 20時
