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どっぷり夜も更けた頃、「久々に二人で星見よ」という蓮くんの提案でベランダに出ることに。
辺りは寝静まり街灯だけがぽつりぽつりと浮かび上がっている。
「今日月の光強いから見えにくいな」
『本当だね。でも綺麗』
見上げた夜空には真ん丸としたお月さま。反対側で燦々と輝いている太陽を表すかのように眩しい。
暫く無言で空を見上げていると視線を感じ、原因である横を向けば柵に頬杖をついてこちらを見ていた。
「Aさ、ふっかさんのこと平気になったよな。前なんて名前出すだけで顔しかめてたのに今なんて優しい顔してる」
空いてる方の手が伸びて私の頬を手のひらで包み込むと親指ですりすり撫でられる。
その撫で方と骨張って男の人らしい指がくすぐったいのもそうだけどいつもより艶やかな雰囲気の目の前の人にたじろいで、それを誤魔化すように口を開いた。
『言われてみれば…?』
「自覚なしだった?」
『うん、今言われてハッとした。蓮くんが言ってた通り先輩は良い人だって分かってきたしそれを踏まえて先輩が言うことは本心だってことも分かってきたから、かな』
まぁ相容れない部分はあるけど、私と話す時に綻ぶ三日月のような目元と柔い声は心地よく安心感さえ覚えるようになってる。
これが良い事なのか悪い傾向なのかは分からないけど何かあったら目の前の人が助けてくれるはずだから。
なんて意味を込めて笑いかけるけど蓮くんはじっと私を見つめてなにも言わない。
「じゃあ、本心なら俺も言っても良いの?Aのこと可愛いとか好きとか」
『蓮くんそんなこと思ってたの?意外だね』
彼も冗談言うんだなと軽い気持ちで返したけどそれが良くなかったみたい。
少し怒った表情をした彼が私の頬を両手で包み込むと自分の中に閉じ込めるように距離を詰めてくる。
「俺はずっと思ってたよ、そういうこと。Aに嫌な想いさせたくなかったから我慢してたけど…それならもう俺我慢しないわ」
優しくて心地よい低い声が静かなベランダに響く。月明かりに照らされた彼はあまりにも綺麗で。
引き寄せられた耳元、今まで聞いたことのない甘美で艶やかな声が私の脳内を侵食した。
「すぐ表情に出る所や食べ物に釣られやすい所とか心配だけど可愛くて、その癖何でも一人で抱え込む所とかほっとけなくて、俺だけに心を許してくれてるのが愛おしくて…
気付けよ。俺はAが思ってるよりAのことが大切で、好きなんだよ」
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作者名:スピカ | 作成日時:2022年3月16日 22時