19話 ページ20
何かを焼く音や匂いにつられキッチンに行けばお兄が居た。
父さんはもう仕事に出た様子。
兄「お前が翼に起こされる前に起きるなんてな。朝飯、まだ出来てねんだけど」
「ん、なんか手伝う？」
兄「いや、テレビ観て待ってろ」
私がキッチンへ入ろうとするとお兄に阻まれたので仕方なくリビングに向かう。
今日の天気はどうやら雨みたいだ。
大して待たずに朝食を作り終え持ってきてくれるお兄。
目玉焼きにウインナーにサラダ、納豆に味噌汁とご飯。
「む、サラダにトマト入れないでって言ってんじゃん」
兄「好き嫌い言うな。だからチビなんだよ」
「うざ。蟹食べたいなー。かーに！かーに！」
兄「…っるせぇ。年がら年中蟹があると思うなボケ」
「でもこの前蟹雑炊だったじゃん」
兄「あん時はお前が熱出したからだ」
ぶっすーと膨れっ面をしながらもご飯を食べ始めれば数分後に家のインターホンが鳴る。
納豆を混ぜているお兄がインターホンに出れば鍵も開いてるから入るように促す。
姿を現したのは翼。
翼「おはよ〜、って…え！？Aがもう起きてるとかヤバ！」
兄「おっす。だから今日は雨なんだよ」
ご飯に納豆をかけ勢い良く食べるお兄を睨み付けながら隣に座る翼に声をかける。
「おは。私だってたまには早く起きることもあるのさ」
翼「それで雨になるなら遅起きでいいんだけど」
「早く起きてなくても雨だし！」
やいのやいのと言い合いしていればご飯を食べ終えたお兄が立ち上がる。
兄「んじゃ、ボチボチ出るわ。皿浸けとけよ。鍵閉めろよ、傘「わかったわかった、いってら」あ！トマト残さず食えよ！」
バタバタと忙しなく行ったり来たりするお兄の言葉を遮り追い出すようにして送り出す。
テレビの音が響く中、私は最後の最後までお皿に残していたトマトを箸で弄る。
隣にいる翼を見れば物欲しそうな顔。
「……いる？」
翼「す、好き嫌いはいけません！兄ちゃんも言ってただろ？」
箸でその赤いヤツを掴んでは翼の口元へ持っていく。
然し翼は中々食べない。後からお兄に私が食べたかどうか聞かれるからだろう。
いつもより高いトーンで言ってみる。
「トマ子、翼くんに食べてもらいたいのぉ」
翼「トマ子って何…そんな猫なで声出しても駄目」
「トマトの女の子だからトマ子。つーくぅん、あたしを食・べ・て？」
"あたしを食べて"発言に動きを止める翼。
けど、その一言で心を動かされたのかトマトを食べてくれる。
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作者名：るーこ | 作成日時：2018年12月26日 19時
