百七十八。鮨屋【麻】 ページ28
“2時間ドラマとかでよく見るじゃん。
喫茶店で向き合って話し込む感じ？
あーゆーの、苦手だからさ…
原さんがイヤじゃなければ、普通にメシ食いながらでもいい？”
銀座での思わぬ出会いから数日。
彼が再会に指定した場所は、築地市場の目と鼻の先に佇む小さなカウンターの鮨店だった。
『お疲れさん。ここ座って』
店内に足を踏み入れると、先に席についていた彼に促され、そっとその左隣に腰掛ける。
.
『おーなんだ智、こんなべっぴんさん連れて。珍しいな』
おしぼりを手渡しながらそう茶化す大将に、“うるせーよ(笑)” と返した彼は、苦手なもんある？と私に尋ねてくれた。
「特にないです」
私がそう答えると彼は『じゃあ大将、適当に出してって』と告げた。
.
『しっかし、今日もたっかいヒール履いてんな。また転ぶぞ？』
彼…“大野さん” は、ほぼ初対面にも関わらず
あの出会い頭からずっと、こんな調子でフランクに話す。
だけど、不快感は感じない。
不思議な人。
「身長も低いし…童顔なので。こういう格好しないと、子供っぽく見られちゃうから」
ヒールはいつも、9cm。
メイクも大人っぽく見えるよう意識して、スーツもできるだけ洗練されたものを選ぶようにしてる。
「最近まで海外で過ごして、向こうでは特に…だからヒールはもう、癖で」
海外では特に子供のように見られがちなのが長年の悩みだ。
『うーん、俺のちょっと下くらいか？』
私をまじまじと見つめる大野さんが、そう訊ねる。
「…大野さん、おいくつなんですか？」
『俺？30』
やっぱり…彼は歳下だった。
「私。その2つ上です」
肩を落としてそう答えると、大野さんは驚いて『え、マジ？そりゃ見えねーわ』と笑った。
『いつ帰国したの？』
「この夏頃なので…もう5ヶ月弱かな」
『そっか。鮨は久しぶり？』
帰国して、ブランクを埋めようと必死に仕事していたら、あっという間に夏は過ぎ去っていた。
お鮨は大好きだけど、気が付けば帰国してからはこれが初めてだった。
そう答えると『マジか。ほんじゃ、今日はいっぱい食いな』と言ってニカっと笑う。
その不意な人懐こい笑顔に、多少なりとも緊張していた心が少しほぐれる。
『ここの海鮮は俺が卸してるし、ちっちゃい店だけど味は保証する』
すると、ここまで静かに聞いていたはずの大将が、すかさず話に割って入って『ちっちゃいは余計だぞ、智！』と戯けた。
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
