百六十五。私の問題【翔】 ページ15
Aは、何度俺を惚れ直させる気なんだろう
今夜の彼女の艶っぽい美しさに思わず浮かれそうになったそんな思いは、“距離をおきたい” というその告白に、呆気なく砕かれる。
『もう一度…私を選んでくれるのを、待ってるから』
もう一度、麻里奈に向き合えって…なんでだよ？
俺には、Aだけなんだって言ってるのに
おそらく自惚れてるわけじゃない。Aだって俺のこと…
それなのに、イマイチ彼女の真意が見えなくて焦燥感に駆られる
『そうしないと…私、自分が料理をやる意味を見つめ直せない』
…え？料理？どういうことだ？
きっと表情にもその俺の疑問は現れてたはずで
そんな俺を見て困ったように眉を下げて無理に笑顔を作った彼女が、こう続けた。
『そうしないと…水商売に見えてしまった私の仕事、きっとこのまま私は、自分で自分を許せないままになってしまうから』
水商売？Aの仕事が？
何言ってるんだ？
だけどその瞬間、麻里奈のある言葉が俺の頭をよぎった。
“どうして、あんな飲み屋の女がいいの？”
まさか…
「もしかして…アイツ、Aにそう言ったの？」
だとしたら…最悪の構図だ。
「Aの仕事を、水商売だって？」
俺の問いかけに、伏し目がちになったAが答える
『そう見えたのがきっと事実だから…私が悪いの。麻里奈さんは、何も悪くない』
頭をガツンと一発、やられたような感覚。
誰よりも近くで、Aの料理への思いを知る身として
その言葉がどれだけ彼女を傷つけたのか、痛いほど理解できるから。
昨晩
俺の部屋で寝ぼけ眼のAを抱きしめようとした時、彼女は驚いたような表情で、俺を引き離した。
だけどすぐに、“翔” と俺のことを呼ぶ彼女に惹き込まれていって…
その時は何故だかわからなかったけど
翌朝、シャワーを浴びようと脱ぎ捨てたままのシャツを拾いあげた時、フワッと香った女物の香水に、ハッとした。
ほんと…なにやってんだよ、俺。
そう思った時には自然と身体が動いていて、隣に座るAを人目も憚らずに抱き締めた
「本当にごめん…傷付けて、ほんとに…」
色んなことが重なって、Aをひどく傷付けてしまったことに心が痛む
だけど、彼女は抱き締める俺の腕をそっと解いて、俺の胸から離れた。
『翔さんも、麻里奈さんも、誰も悪くないの』
『これは私の問題だから。だから…見つめ直す時間が欲しいの』
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
