百六十四。もう一度、私を選んで ページ14
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『俺…ここで、Aのこと泣かせてばっかりだな』
“距離をおいた方が良い”
私の言葉から暫しの沈黙の後、ようやく口を開いた翔さんがそう言った。
“Aさんは、泣いていてもキレイなんだな”
ここで初めて私の涙を拭ってくれた、あの日が蘇る
さっき思わず流れてしまった涙にすぐに気が付いたのだろう、私たちの視界に入らぬようにサッと気配を消して隅の方でグラスの手入れをする
そんなバーテンの利きすぎた気遣いが、嫌に身に染みた
『アイツ…Aの店に行ったんだって？』
“アイツ”
なんだ…知ってたんだ。
『ごめん…ちゃんと、Aに話しておくべきだったな』
『過去の話だし…俺の中ではとっくに終わってるから。わざわざ過去の話、する必要ないと思ってた』
“年齢も年齢だしで、麻里奈ちゃんは翔さんに結婚の意思を迫ってたけど”
“なかなか翔さんがその気を見せず、ってところで、ズレ始めちゃってね”
『またうちの会社に出戻って、また同じ部署になるってことは…なかなか想定外だったけど』
“3年前に結婚して、香港について行ったんだけどね。潤くんともダメになっちゃって。
離婚して、日本に帰国して、この夏に会社に復帰したの”
つくづく、男女の関係を握る鍵は
“タイミング” だと思う。
その当時と今とでは、状況も大きく変わっているだろうし
もしも今…翔さんが彼女の想いに揺れているんだとしたら
私の存在が、障害になっているんだとしたら
私は、身を引かなければならないのかもしれない。
そんな不安に駆られたのが本心で、昨晩は彼を試すように体を重ねてしまったけど…
“A”
翔さんは、そんな不安を察するかのように、その不安を拭い去るように、熱く優しく、私を扱った。
『アイツにも、はっきり伝えてるよ。もう昔の関係には戻れないって』
右側に座る彼に視線を合わせると
真っ直ぐに私の目を見つめて、言葉を続ける
『俺には、Aだけ。それだけは信じて欲しい』
そう強く言い切った翔さんは、左手でそっと私の右頬に触れる
『だから。これが最後ならなんて、言うなよ』
やっぱり彼は、
私が欲しい言葉をすぐに理解して優しさで包み込む。
でも、だからこそ…
「翔さんを、信じたいの。だから…もう一度、彼女と向き合って」
頰に触れる彼の手に自分の手を重ねて
祈るように告げる
「そしてもう一度…私を選んでくれるのを、待ってるから」
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
