やさしい食卓三。【SS】 (ページ7)

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六十七。フライングページ7

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『…そうだったの』

彼は前に向けていた視線を戻し、私を真っ直ぐ見つめるけど

私は彼から視線を外して、目の前の景色に向けて言葉を続ける

「おばあちゃんの話によると、確か…2歳の時かな」

「ある日、保育園に私を預けたきり、母は迎えに来ることは無くて」

「そうして、銀座で店をやっていた母方のおばあちゃんに引き取られたみたいなんです」

彼は尚も、私を見つめ続けている

「それからずっと、おばあちゃんと2人で暮らしてたんですけど」

「小さかった私を一人で家に置いておけないと思ったのか、毎日の様に店に私を連れて行って」

「常連客のおじさん、おばさんに可愛がってもらったりなんかして」

そう

確かに両親や兄妹のいない寂しさは幼いながらに感じていたけど

「普通に両親がいて、っていう環境だったら得られなかっただろう人との繋がりにも恵まれたし」

「何より、私の事を一番に考えてくれていたおばあちゃんと、あの銀座の店があったから、今の私がいる」

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“A、美味しいかい？”

“うん、すっごく美味しい！おばあちゃんのご飯、だーいすき！”

“そりゃ良かった。いっぱい食べるんだよ”

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「…だから私は、自分の境遇を恨んだりしないし、不幸だとも思わない」

「今こうして、おばあちゃんの教えを胸に料理人として生きる事が出来て、心から幸せなんです」

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しまった…またペラペラ喋ってる

お酒も進んでるせいか、ついつい話し過ぎてしまって

言葉を発さない彼に不安になって、そっと視線を彼に向けると

『…あっ、来た』

…え？

何だろう、そう思った瞬間、店内の照明が少し暗くなる。

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『お客様、お誕生日おめでとうございます』

そう言って私たちの席にやって来たウエイターが、

綺麗にデコレーションされたバースデープレートのデザートを運んで来てくれた。

『ちょっとフライングだけど』

そう言う彼は、再度私を真っ直ぐ見つめ直す

『Aさん、俺、本当に君に出会えて良かった』

『君を産んでくれたお母さんと、君を育ててくれたお祖母さんに、心から感謝するよ』

他の居合わせたお客さんも、こちらに向けて拍手を贈ってくれる

『あ、Aさんの店を紹介してくれた二宮にも感謝しないとな』

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ダメだ

このところ、彼の前で

何度、涙を流してしまった事だろうか