やさしい食卓三。【SS】 (ページ14)

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七十四。一人目【和】ページ14

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早い時間にお店に入った事もあって、この日の一番客は俺らだったけど。

流石のAさん。

今日が彼女の誕生日だと知る常連客で、あっという間に他の席が埋まった。

中にはプレゼントを持参している客もいて。

と、言う訳で

まあ一応？

彼女の面子を考えてなのか、翔さんは彼女にあまり話しかけないようにしていた。

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『人気者だね、彼女』

ここに初めて来た潤くんが、他の客の接客をするAさんの様子を見て言った。

そりゃあ、ね。

「あんだけ容姿端麗で、こんだけウマい飯作れて、その上人柄も良いと来れば、客も放っておかないよね」

俺がそう言うと、苦い顔した翔さんが “…そうだな” と言って、手に持っているグラスを見つめる。

『や、でもさ。マジでウマいよ。彼女…27になったって言ったっけ？若いのに凄いね』

今日、潤くんが来る事を聞いたAさんは、事前に翔さんから潤くんの好きな食べ物をリサーチしていたらしく

俺たちの目の前には3人の好物がバランス良く組み込まれた料理が並んでいる。

こういうところが、彼女の凄いところで。

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…あーあ

そんなに心配そうに、彼女のこと見つめなくてもね

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『お味、いかがですか？』

他の客のサーブが落ち着いたのか、俺たちの方を心配して声をかけてくれる。

「バッチリ。すげーウマい」

『本当、美味しいです』

俺と潤くんがそう応えると、彼女は忽ち笑顔になる。

『あ…櫻井さん、おかわりお作りしますね』

翔さんのグラスが空になりかけていた事に気付いた彼女に、この人は

『え、ああ…ありがとう』と言って応えた。

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もう、翔さん

色々ダダ漏れですよ？

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『ニノは、奥さんとはどう？もう結婚して一年になるでしょ？』

あ、そうだった

潤くんにそう言われて、俺も一つ報告があった事を思い出す。

「そうそう。

今年の冬にね、一人目産まれるわ」

なんでもないようにそう言うと、二人が声を揃えて

『えっ！』と言う。

『マジで！おめでとう！

いや…あのニノが、父親になるとはねえ』

『いやあ、本当に。すっかり落ち着いたな…』

いやいや2人共、いったい俺のイメージどんなんだったのよ？

翔さんのおかわりを作り終えたAさんも、話が聞こえていたようで。

『まあ…二宮さん、おめでとうございます』

と言って、笑いかけてくれた。