やさしい食卓二。【SS】 (ページ7)

今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:217,362 hit

三十七。オトコ出来た？ページ7

.

ドレスを購入した足の流れで、南青山周辺のお店を回り

その他の必要なものを買い揃えた。

この後はもう予定もないし、

家に帰ってゆっくり過ごそうかな。

そう思って帰路につこうとしたところで、ケータイが鳴った

.

『…あ、A？今日、休みだろ？今晩何してる？』

声の主は、智くん。

「特に予定もないから、家でゆっくりしようかなって思ってたけど」

『たまには、2人で外にメシ食いに行かない？』

あら、珍しいお誘いだ。

「うん、良いよ。ちょっと荷物があるから、一度家に帰るね」

.

.

『…A、こっち』

智くんが指定した店は、私たちの地元の月島にある

昔から知る老舗のもんじゃ焼き屋さんだった。

『あら～Aちゃん！ちょっと見ないうちに、こんなにキレイになって…』

私を子供の頃から知る店主のおじさんに軽く挨拶を済ませ、智くんの待つテーブルにつく。

.

.

『…なぁ。最近、オトコ出来た？』

頬杖ついて私をジーっと見ながら、突然そう問い掛けてきた

「え？いや、出来てないけど…どうして？」

私がそう応えると、彼は何か納得いかないような顔をした。

『…そう』

そう言った後、少し間を置いて言葉を続ける

『なんか、最近またキレイになったなと思って』

この店名物の海鮮もんじゃを頬張りながら、何でもないようにサラッと言う

.

智くんが面と向かって私の容姿を褒めたのは、この20年の付き合いでこれが初めてだ。

「…どうしたの？珍しいこと言うから、怖いよ」

少しおどけて私がそう言うと、彼は動じることなくこう言った

『いや、ずっとそう思ってたけど。口にしてなかっただけ』

…どうしたの、急に。なんか、調子狂う

『あのさ』

しばらくの沈黙の後、智くんから口を開いた

『店、他にも誰か雇ったら』

…え？

「なに、突然」

『…いや、やっぱ、女一人じゃ危ねえかなって』

やっぱり、今日の智くんは少し様子がおかしい。

「…大丈夫だよ。もう、3年もやってるんだし、おばあちゃんだって一人でやってたもん。心配してくれるのは有り難いけど…」

私がそう言い切ると、彼はもうそれ以上

その話には触れなかった。

.

ほんと。急に、どうしたんだろう？