やさしい食卓二。【SS】 (ページ14)

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四十四。偶然の再会にページ14

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『なんか、変に気を使わせちゃったね？お友達』

彼について再びこのホテルのエレベーターに乗り込むと、45階のダイニングフロアに降り立つ。

『いやーしかし、まさか生田の嫁さんの親友がAさんだったなんて。世の中狭いな』

そう言いながら歩みを進める彼に続いて足を踏み入れたのは

ジャズの生演奏が流れ、白いタキシードに身を包んだバーテンダー2人が立つ雰囲気ある広々としたバーだった。

アテンドマンに椅子を引かれ、カウンター席に腰を下ろす。

やはり日曜日のこんな時間とあって、人気は殆ど無いに等しい。

ここは、六本木の一等地というロケーションに聳え立つ老舗ホテルの最上階。

高い天井一杯まで広がった大きな窓からは、東京の煌びやかな夜景が視界一杯に飛び込んで来る。

『そう言えば、普段お酒は飲むの？』

外した腕時計をテーブルに置き、リラックスしたように櫻井さんが私に言った。

「あ、普段はお休みの日しか一切口にしないんですが…実は、大好きなんです(笑)」

私がそう一つ告白すると、櫻井さんは忽ち嬉しそうな表情を浮かべ

『え、そうなの？じゃあさっきのお友達の話も、あながちウソじゃないってかんじ？(笑)』

と言って、バーテンダーにバーボンウイスキーのロックとソルティドッグをオーダーした。

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『この間は、本当にありがとね』

お酒が作られている間、櫻井さんはそう呟いた。

『なんか、あんな情けないところ見せちゃって、恥ずかしくてさ。でもずっと、あの時のお礼がしたくてね』

彼はそう言って、目の前の夜景から手元に視線を降ろし、眉を下げて微笑む。

ああ…本当にどんな仕草も、絵になる人だ。

「そんな、お礼して頂くようなことなんて私、何も『いや』」

私がそう否定しようとすると、すかさず声を挟む

『あのお陰で、すげー励まされたんだよね、本当に。マジでAさんのお陰』

“今日は本当にありがとう。

Aさんのお陰ですげー元気出た”

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私を真っ直ぐ見つめてそう言うと、出来上がったお酒を手に持って

『それじゃ…今日の偶然の再会に』

そう言って、乾杯した。