やさしい食卓一。【SS】 (ページ10)

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十。確率【翔】ページ10

『俺の奥さん、幼馴染なのよね』

大好物だと言うAさんのハンバーグを頬張りながら、不意に呟いた。

『実家が向かい同士でさ。年は1個下なんだけど』

『幼稚園も小学校も、中学校から高校までぜーんぶ一緒。特にガキの頃なんて、何をするにも一緒だったワケ』

『あ、高校は嫁さんが俺を追って来たようなもんなんだけどね』

そう話す二宮が、その途中にAさんに向かって

“やっぱうめーな” と言うと

Aさんはやっぱり柔らかく微笑んだ。

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『嫁さんが俺のこと好きなのは、ガキの頃からずっと分かってた。だけど、何でかね』

『それには応えてやれねーなって、ずっと思ってたの』

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二宮の話に耳を傾けつつ、俺もAさんのハンバーグを一つ摘んでみる。

…ん？何だコレ、美味い。

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『純粋でキレイな心のアイツをさ。俺みたいなやつが触れることなんて許されねーよって』

『なんか自分で抑制しちゃって、長いこと突き放して』

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今はもう “嫁さん” となった、

その大切な彼女のことを思い浮かべて話しているんだろう

俺が見たことのないような優しい顔をして続ける。

『結局のところは。アイツが “自分にはカズくんしかいないんだ” って言ってくれてたのと同じで』

『“ああ、俺にもコイツしかいねーんだな” ってのに、気付くのが遅かったってだけのことだったんだよね』

なんか良いな、そーゆーの。

“年貢の納め時” ってのは、そういうことか。

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「いや、まさかお前にそんなヒトが居たなんてね。

…“カズくん”」

『あ、やべー、口が滑ってた(笑)』

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そんな俺たちのやり取りを黙って料理をしながら見守っていたAさんも、

『カズくん。グラス空きそうですけど、お飲み物お作りしましょうか？』

なーんてイタズラに問い掛ける。

『ちょっと、Aさんまでやめてよ(笑)』

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人生の中で、そんな風に思える相手に出会えることってどれくらいの確率なんだろうな。

そう思えば思うほどに

誰にでも忘れられない人や、恋があるってことを感じさせる。

俺はまだ、そういうヒトに

出会えていないだけなんだろうか________

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