やさしい食卓一。【SS】 (ページ22)

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二十二。魂ページ22

昨日買ったお花の話になって、つい、おばあちゃんのことを話してしまった

それも相手はまだ2回目のご来店の櫻井さん。

気を遣わせてしまうじゃない。

何言ってるのよ、私…

そう少しばかり自分に呆れてしまった私に、櫻井さんが言った。

『今の話だけで、Aさんのお祖母さんがいかに凄い人だったのかが伝わったよ』

そう言葉を続ける櫻井さんは、真剣な眼差しを私に向ける

『Aさんの作る料理には、お祖母さんの魂が込められてるんだね』

…え？

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『実は昨日、銀座でAさんのこと見かけてから、無償にAさんの美味しい料理が食べたくなって』

“Aさんの料理には、お祖母さんの魂が込められているんだね”

『Aさんがタクシーで過ぎ去ったその場で、前に貰ったショップカードを財布から取り出して電話番号を調べようとしたらさ』

櫻井さんの強い眼差しに堪え兼ねそうになっていると、気が抜けたようにフッと笑って

『“日曜定休” っていうことを知って、うな垂れたよ』

と言った。

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そのあと他のお客様が見えるまでの一時間ほど、櫻井さんとたわいも無い話を続けた。

その中だけでも櫻井さんのことを色々知ることが出来て

私と同じで生まれも育ちも東京だということ、

海外旅行が好きなこと、

学友を大切にしていること、

仕事に自信と誇りがあること、

二宮さんが無類のハンバーグ好きなら、櫻井さんは無類の貝好きだということ(笑)

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そして

櫻井さんのお母様方の家業が呉服屋だということを聞いて、今日の出会い頭での言葉を思い出す

“今日も素敵なお着物で。キレイな藤色だ”

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『そういう訳で、割と着物の色言葉には耳馴染みあるんだよね』

『藤色、一斤染、薄紅、団十郎茶色とか』

流石、なかなかの知識を持っているよう。

『ちなみに俺、撫肩だから着物とか浴衣とかめっちゃ似合うの(笑)』

…あ、確かに撫肩だ(笑)