やさしい食卓一。【SS】 (ページ15)

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十五。再会【翔】ページ15

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日本に帰国して、1ヶ月ほどが経った。

東京本社での仕事の段取りも整い、

久々の日本ということで、昔からの得意先への挨拶回りをする日々。

まー飲まされる…

加えて学生時代の級友たちとの再会や、家族との再会。

久々に会った母親には

『32歳にもなって、結婚は愚か彼女もいないなんて！！』

と散々どやされ、何故か一回りも離れた弟に慰められるという…

まあ何かと忙しく駆け回っていた。

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部屋はいくつか迷った結果

懐かしい東京の夜景が一望出来る、赤坂のマンションに決めた。

引っ越しも落ち着き、ようやく一息出来そうな休日となった日曜日。

天気も良いし散歩がてら久々にスーツでも新調しに行くか。と思い付き、銀座へ繰り出した。

しばらく中央通りを歩いていると、

一際大きな花束を抱えた白いレースワンピース姿の女性が正面から歩いて来るのが見えた。

顔は花束で殆ど隠れているが

膝下からスラリと伸びた脚と、ゆるくカールのかかった長い黒髪が風に揺られ、なかなかの美女の予感。

案の定、すれ違うヤローの殆どが彼女を振り返った。

互いに歩みを進める中、徐々に近付いて行くと

ん？

なんか見覚えのある顔…？

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“櫻井さん、お飲み方はどうなさいますか？”

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…え？Aさん？

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そう思った時には、彼女は俺が追い付く前にタクシーに乗り込んで行った。

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チラッと見えた顔は、彼女だったような…

でも、顔が見えたのがあまりにも一瞬の出来事だった為、確信が持てない。

第一、着物姿しか見たことがない。

人違いかな…

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“またお待ちしてますね”

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そういやあれから何だかんだバタバタして、

二宮と行ったきり店には行けていない。

今日は予定もないし、今晩行ってみるか。

そう思い立って、財布にしまってあった藍色のショップカードを取り出して番号を探していると、

ふと目に入った “日曜定休” の文字。

もう既にAさんとの再会に少し心が躍っていた俺は、項垂れるしかなかった。