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「止めて、二人とも。私に言わせればどっちも"変わり者"よ」
帰った帰った、とAは男ーーアカイを半ば強引に家から追い出し、すぐさま部屋中に探知機を翳して回った。
「"まだ"疑われてはいないみたいね、鶴の機転が効いて助かったわ。シュウはFBIイチのキレ者で、体術も熟す凄腕のスナイパーよ。気を付けて」
「……ああ。Aとはどういう関係なんだ？」
「アメリカ滞在時、目的が一致してペアを組んでいたの。私が接近戦なら、彼は主に遠方からの援護射撃。今は個人的な一顧客」
「"好いた女"だの言っていたが……」
「気にしなくて良い、ドームで話が付いた件と明日の日程含めてマイキーに話しましょう」
幼馴染みの勘だろうか、Aが何かを隠しているのは明白だった。
だが、彼女のプライベートに踏み込む資格はないだろう。
モヤモヤする心をどうにか鎮め、マイキーに報告する。
案の定「何故FBIを殺らなかった」と問いただされたが「彼はあくまで情報屋としての知り合い。FBIのエースが私を訪ねたのを最後に消えたら、いくら物証を細工しても疑われる。面倒だわ」とAが横から溜息混じりに放ち、宥めていた。
「鶴、今日一緒に寝よ！」
「……俺も男だぞ。もうガキじゃない」
「でも鶴は鶴でしょ」
信頼されているのが嬉しいような、警戒心のなさーー仕事においては慎重だがーーが心配なような、異性として意識されていないのが残念なような、何とも言えない心境である。
結句、昔と変わらずAを抱き枕に良く眠れた自身に呆れ半分、手を出さずに済んだ事に安堵した。
メイを挟んだ向こう側に、Aに遠慮なく手足を投げ出す幼いイザナの幻覚が見えたのも功を成したのだろうか。
最終日、三途が撃たれたというドームをーーAがホームレスと談笑する横で殺気を放たれながらもーー何とか越え、スムーズにブツの取引を終えた。
「……A、その大量のヤクは何だ」
「ハルのお気に入りみたい、お土産に頼まれていたの」
苦笑交じりにAが掲げたカラフルな錠剤がパンパンに詰められた袋を受け取り、ヘリの荷台に雑に投げ入れた。
どこに行っても銃を向けられるわ、僅かに熱が残っている死体が大通りに転がっているわーーAが脈を取っていたーー、数少ないデリの扉や窓は原型を止めていないわ、やはりとんでもないゲットーではあったが、不思議とまた訪れたいと思える街だった。
勿論、この華麗で愛しい幼馴染みと。
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作者名：カーター千之助 | 作成日時：2024年3月1日 0時
