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「チンクエチェント！どれだけ古くても整備やカスタムは専門だから、62年式辺りを探すわ」
「お前はルパンか」
「ふふ、変装はきっと私よりエレナの分野ね」
そうお茶目に話していたAが本当にセーフハウスを借り、500に乗って出勤して来た。
「A！夜中マイキーが大変だったんだぞ、スマホ見ろや！！」
「ごめんハル、気になる案件に集中したくてナイトモードにしてた。過呼吸？」
「いや……Aの幻覚を見てたのか、随分と錯乱していた。恐らく今お前の部屋だ、悪いが頼む」
大丈夫よ。急ぎ足で廊下を歩くAの後を三途とついて行く。万が一の為だ、Aが傷付いたらきっと俺はもう。
徹夜したのだろう、九井とすれ違うも空気を読めるアイツは「ご武運を」と言わんばかり片手を上げて寄越した。
まだ早朝で、Aを見付ければ必ず纏わり付き、同時に三途に喧嘩を売る灰谷兄弟が出勤前なのは幸いである。
Aが静かに自室のドアを開けた。
皮がビリビリに破かれ、綿が飛び出たソファの前で立ち竦み、俯きながらぶつぶつと何かを言っている風なボス。
イザナも不安定な時こうなっていたような、や、今はそれどころじゃない。
Aは以前お気に入りだと話していた猫足のアンティークテーブルが粉砕されているのも意に介さず、ボスの元へ歩んだ。
「A、Aどこ行ったのねぇ、A」
「マイキー、ただいま」
「っ、！A……また偽物！！」
「偽物じゃないわ。ほら」
握りしめていた何かの破片を投げようとしたボスをぎゅ、とAが抱き締める。
「マイキー、手怪我しちゃったね。私のせいだ、ごめん」
「A…………？」
「うん。Aよ、マイキー」
「っぐ……ぐすっ……A……行かないで、行か、」
「ん。聞いてマイキー、昨日車が納車されて、私ったら浮かれちゃった。お詫びにマイキー1番に乗せてあげるね」
「っ、ん……ぐ、ずっ……うん、A」
「少し眠れそう？会議はまだだし、遅れそうならハル……進行お願い出来る？」
「ああ」
「鶴は救急箱から消毒液とガーゼと包帯取ってちょうだい」
「わかった」
そうして、Aは慣れた風にボスを寝室に連れて行き、ベッドに腰掛けさせれば血塗れの両手を丁寧に濡れタオルで拭き、手当てをしてはボスを横たわらせた。
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作者名：カーター千之助 | 作成日時：2024年3月1日 0時
