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いつからか、人に触れられると虫が這うような感覚がして苦手になった。
制止しようと立ち上がった三途に「直れ」と命ずる。
だって、Aなら全然嫌じゃなかったから、驚いただけ。
「"Aは将来美人になる!"って言う度にイザナに蹴飛ばされて泣いてた、学習しないお兄ちゃん」
「っふ、はは。でも確かにA、美人になってる。モテねー割には見る目あったんだな」
「モテなかったの?」
「うん。告白20連敗」
「……亡くなる前、ガールフレンド役やってあげたら今頃ムフフな夢見ているかしら」
でも歳の差がな、と大きな目を転がし真面目に考え出したAに、今度こそ昔のように腹を抱えて笑った。
「マ、マイキー……?」
「……聞こえんぞ、スマホ弄っとけ」
三途もココも聞こえてっし、あー腹いてー。
「イザナと二人で遊びに行く日も、私や鶴を混ぜてくれる日もあったよ。でも私が里子に貰われて、シンイチローくんとはそれっきり」
「……そっか。それからのイザナとAは?」
「イザナがリンチに合ったって鶴から連絡貰ってお見舞いにも通ったけど、イザナが退院すると同時に私がまた捨てられちゃったんだ」
「ああ……"Aが消えた"って二人で探し回って、Aの養父母にも問い詰めたんだ。荒れ狂ってたイザナが脅したら、すぐに吐きやがった。海外のゴミ捨て場に置き去りにした、消息も知らんと」
「コタがゴミ捨て場なんて、どうしようもない人たちね。住めば都よ」
「……実子を身籠っただの言っていたが。それからはボスも知っての通り、お礼参りと称して暴れたイザナはパクられた。だが、出院してすぐにAから国際電話があったと喜んでたな」
「既にちびっ子情報屋だったからね。亡くなる前年末に"もうすぐ俺らの国が完成する、迎えに行く"なんて高揚してたのに、薄情だわ」
「……イザナが死ぬ間際、"会いたい"っつってたの、てっきりシンイチローとエマの事かと思ってた。Aだったんだね」
「さぁ?ガールフレンドでもいたんじゃない、プライベートは追っていないから知らないけれど」
「ううん、きっとAだ」
「マイキー、チョコも良い?」「良いよ」イザナの姫様は、今無邪気にたい焼きの形を観察しているAだったに違いない。
俺が今気を許しているように、イザナにとっても安らげる存在だったんだろう。
でもね、イザナ。いくら義兄でも、Aはもう梵天の、俺の姫様だよ。
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年3月1日 0時