【文スト】其の女、何故生きる① (ページ30)

今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:45,512 hit

葛藤ページ30

私はポートマフィア、仕事はきちんとこなさなければならない。

分かってる。分かってるからこそ悔しい。辛い。しんどい。

私は命を奪わなければならないのか？

そういう運命なのか？

他人を傷付けなければならないのか？

分かってる。分かっていた事なのに…

Aは雨の降る外を窓から眺める。

本音は、殺したくない。傷付けたくない。助けたい。

然し、仲間を護らなければならない。やるべき事を実行しなければならない。現場を仕切らなければならない。

此方も本音だ。

何方を本音にするのかを決めるのは未だ先でいいよね。

ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

Aが携帯を見るとそこには“首領”の文字が。

首領がAに電話を掛ける事は殆ど無いから、よっぽど重要な事なのだろう。

Aは直ぐに執務室へ向かった。

「A、君の気持ちは分かるよ
でも、君はポートマフィアだ
仕事はきっちりこなしてもらうよ」

首領は1番初めにAにそう云った。

『………分かっています
私はポートマフィアです故』

「…分かっているならそれでいいんだ
だが、私情を持ち込んで任務を失敗したなら…」

『……はい、勿論相当の罪を受けます』

「…それは、任務を成功させないつもりかな？」

『………』

Aの瞳が揺らいだ。

其れを見た首領は何時もより低い声でこう云った。

「A、君なら出来るよ」

『ッ………はい

必ず成功させてみせます、首領』

Aは首領の目を見つめて一礼した。

部屋に戻ったAは、執務室へ行く前のAとはまるで別人だった。