ユキヒラソウマ ページ4
朝。遠月学園の扉を開ける。
流石卒業到達率10%以下のエリート校ね。
外観も整ってるし、すごいわ。
感心しながら足を踏み入れる。
…ここに、お父さんも通っていたのね…。
なんだか今更父が遠くに感じるような思い。
私の父は、フランスで店を出す一流シェフ。
本当は私が店を継ぐ予定だったけど、
私は、歌を歌うことが大好きだったから、
料理人という職から逃げ出してきた。
でも、この間久しぶりに父が帰ってきて、
無理矢理この学園に叩き込まれた。
父が私に才能があると認めてくれていることは
十分わかる。
だけど、小さい頃から嫌々料理を教えこまれた私は、どうしても料理というものを好きにはなれなくて…。
結局。父にはもう抗えないまま、この学園で過ごすことになる。…もちろん、歌手も続けて行くつもりだけど。
やっぱりまだ学園中はソワソワしてる。
けどそんな中、一人の少年が声をかけてきた。
「よう、早乙女。おはよ。」
ザッ
全ての生徒の視線が少年へと向かう。
でもその少年は辺りも気にせず教室へ入っていく。私もその少年についていくように入室する。
貴「おはよう。あなた名前は？」
幸「俺？幸平創真。」
貴「幸平くんね。覚えておくわ。」
幸「おう！つか早乙女、隣？」
やっぱり気軽に話しかけてくる幸平くん。
でも、…私にはそれがとても嬉しかった。
貴「そうみたい。今日の課題は一体何でしょうね。」
幸「あー…なんかプロヴァ…なんとかっていう料理をメインに調理するらしいぜ。」
貴「プロヴァンス料理ね。フランスのプロヴァンス地方の料理で、南イタリア料理なんかでもおなじみのトマト、オリーブオイルなどを使用し、エルブ・ド・プロヴァンスって呼ばれる当地独特のハーブとかを調合したものを用いる料理よ。」
幸「へ、へえー…。詳しいんだなー。」
幸平君は、ちんぷんかんぷんみたい。
貴「これくらいは常識でしょ。ま、でも父がフランス料理店を持っていてね。小さいころに学んだことがあったわ。」
幸「へえー！すげえな！なんて店？」
興味津々の幸平くん。
貴「le cielっていう所なんだけどわかる？」
幸「わかんね…。」
あごに手を当てて考えたみたいだけどわからなかったみたい。
なんだか幸平くんと話してると、私も普通の女の子に戻ったみたいに思える。
幸「あ、先生来たからまた後で聞かせてくれ。」
そう言って幸平くんは背を向けた。
…幸平創真か。面白い人だな…。
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作者名：月女神 | 作成日時：2015年3月15日 22時
